召喚者-ティファニア-part1/半妖精の召喚の儀
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幼き日の夢を、ルイズは見ていた。
ルイズの母は娘であるルイズの名を叫びながら彼女を探し回っていた。ルイズは魔法がうまく使えないことを母親にしかられ、母が目を離した隙をついて逃亡した。
彼女には二人の姉がいる。姉たちと比べて物覚えが悪いと指摘されていたが、ルイズとて好きでこんな状態になったわけじゃない。自分が才がないからというのもわかるが、それでも現実が理不尽に思えて我慢ならなかったルイズはどうしようもなく逃げ出したのだ。
「ルイズお嬢様ーーー!どこにおられるのですかーーーー!?」
母からルイズ捜索を命じられた執事やメイドたちも共にルイズたちを探している。自分たちの背後の草陰にルイズが隠れているとも知らず、彼らはぼやきだす。
「ルイズお嬢様も難儀だな。自分だけ魔法ができないだなんて…」
「ああ、本当にかわいそうだな。奥様だけじゃない。旦那様もお厳しい方だしな」
悔しかった。同情してくれる彼らのことを悪く考えているわけではない。でも、同情されている自分が情けなくて許せなかった。歯噛みする思いをかみしめながら彼女は、自分が『秘密の場所』と呼ぶ場所へこっそりと向かう。
そこは中庭にある池。嫌なことがあるとルイズはそこへ向かう。小舟に乗ると、ルイズは抱えた膝に顔をうずめて泣きじゃくった。
父は領地のことで大忙しで家を空けまくり。厳しすぎてルイズの気持ちを考えているとは思い難い母。母親同様厳格さばかりが飛びぬけて口を開けばきつい言葉しか言ってこない一番上の姉。唯一穏やかな性格の二人目の姉だけは自分に対して優しい言葉をかけてくれる。でも、体が弱いから時折甘えることができないことがある。ちぃ姉様に無理な負担を駆けたくない。だからこの日のルイズは…。
「…一人ぼっち…」
「僕のルイズ、泣いているのかい?」
顔を上げると、そこには一人の青年がいた。銀髪の長い髪をたなびかせ、その上に帽子を被っている人。ルイズは彼を見た途端、さっきまでの沈んだ顔から一転して明るくなった。
「子爵様?いらしていたのですか?」
「ああ、例の約束でお父上に呼び出されたんだ。そして来てみれば、使用人たちが君を探していると聞いてね。もしかしてと思ってここに来たんだ」
『子爵様』、それはルイズの憧れの男でもあった。10歳ほど年上の人物で、ルイズに対して二人目の姉以外で数少ない優しい言葉を何度もかけてくれる、ルイズの支え。
「また、母上殿にお叱りを受けたみたいだね」
「…ごめんなさい」
「どうして謝るんだ?気にしなくていい、僕からとりなしてあげよう。さあ、おいで」
「はい…!」
子爵と呼ばれた青年は、ルイズに手を差し伸べると、ルイズはほんのり顔を赤らめながら手を伸ばしていく。すると、一陣の風が吹き抜け彼の帽子を吹き飛ばした。
「さあ、俺のルイズ」
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