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SAO─戦士達の物語
GGO編
八十三話 お菓子な依頼人
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「確実に実る努力」から生み出される優越感は、他のどんな物よりも人にとっては魅力的だ。単純(シンプル)かつ原始的(プリミティブ)。そしてそれゆえに、麻薬とも呼べるほど依存性が高い……すなわち、《強さ》と言う優越感。物理的な、身体的な力を持って、眼前に立ちふさがる障害を、敵を破壊出来る純粋な力。

強さを得てヒーローになりたいなんて言うのは、男子ならば殆どの者が一度はあこがれる夢だろう。そしてVRMMOならば、単純な形で、それを得ることが出来る。やり方次第で夢を、夢のままにせずに済むのだ。

とはいえ、ヒーローがヒーロー足るのは、その最早狂人とも言える絶対的な己の正義への妄信と、それと対立する(=自動的に絶対悪)物を何の迷いもなく殲滅せんとする精神力。そして有る程度それが不特定多数の人間の倫理観に当て嵌まっている故だ。それはこの世界で人がそれに乗っ取って生きるには余りにも不安定で、危うい。

が、VRMMOで強さを得る……あるいは強さを得たと錯覚することはできても、ゲームはそう言ったヒーローの危うさや、強さを持つ者に必要であろう心構えについては教えてはくれない。
故に、その錯覚の強さを、現実世界で他人の迷惑も考えずに使う阿呆も出て来る。

正直なところ、涼人としては碌なものではないと思っていた。

そうしてその話から……菊岡は、妙な話をし始めた。

「その力って……そう言った心理的な所だけなのかな?」
「……?どういう事だ?」
和人が聞き返す。
菊岡の質問は、こうだ。

「心理的な影響だけでなく、実際にプレイヤーの筋力が上がるなど、物理的な影響が、ゲームの《錯覚》から発生することは、無いのだろうか?」

有るか、無いかと問われると、一概には言えない。
VR技術が肉体そのものに与える影響と言うのは、いまだ大脳生理学やそのた学術的観点からアプローチはしているものの、研究中の域を全く出ていないのだ。

そして、そこからが、菊岡の本題であった。

「とりあえず、これを見てほしい」
菊岡が自身のタブレットPCを操作すると同時に、画面を此方に向ける。
そこに映っていたのは一人の男の写真と、住所などのプロフィール。写真の方がまぁ、何と言うかいかにもと言った感じで……首やら頬にかなり脂肪が付いており、銀縁の眼鏡に長めの髪。と言った容姿だ。

「ふむ、何だこれ?糖尿病患者か?」
「こらこら、死者を冒涜するものじゃないよ」
「死者……ね」
菊岡の言葉に、和人が表情を引き締める。

「えっと……先月、十一月の十四日に東京都中野区のあるアパートで大家が異臭に気付いた。発生源と思われる部屋をノックしても返事が無く、電話もつながらない。電機は付いていたため部屋に踏み込むと、この男性の死体を発見。名前は茂村保、二十六歳独身。
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