今更ですよ
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
のは、それから30分後の事だった
--------------
思い出せない
大井さんって、誰だっけ?
たまねぎをスライスしながら考える
大井さんおおいさんオオイサン・・・・
油をひいたフライパンでたまねぎを炒める
大学関係なのは間違いない。 高校までの交友関係は全てリセットしている
大学となると、研究室かバイトか
どちらにも大井さんなんて人はいない
「 それ以外か? 」
僕の記憶に残らないで、僕を記憶に残す方法なんて・・・
フライパンに豚肉を加えて、さらに炒める
この前のお礼ってことは、一方的に顔を知っているとかじゃなくて
何かがあったってことか
最近かぁ・・・
仕上げに焼肉のタレと生姜で味をつける
僕が無意識にやったことに恩を感じているのか、それとも僕が覚えていないだけなのか
出来上がった生姜焼きとご飯で夕食をとる
シャワーを浴び、布団に入る
「 考えてもわからないなら考えなくていいかー・・ 」
もやもやした気持ちを振り払い、瞼を閉じた
---------------------
あの夜のことははっきりと覚えている
私は大学から歩いて家に帰る途中、怪しい人を見かけた
そろそろ春も終わろうというこの時期にハンチング帽を目深に被り
黒のロングコートを着ている
いかにも・・・・な、感じだったので
路地に入り、すれ違わないように遠回りをして帰ろうとした
・・・が、何故か道の先にはあの黒コートが立っている
私はもう一本奥の路地に移動したが、そこにも黒コートがいる
すれ違うだけ
それだけの行為のはずが、頭の中のもう1人の自分がそれを拒否する
私は立ちすくんでしまった
向こうが近寄って来るわけでもなく、ただこっちを見ているだけなのが逆に不気味だ
家に帰れる気がしない
とりあえず大学に戻ろうとすると、後ろにも同じ格好の人物がいる
途端に体中から嫌な汗が吹き出る
こんなにも非日常がいきなり現れるなんて、思ってもいない事だった
・・・思ったところでどうにもならないのだが
今までのぬるい日常があっけなく終わりを迎えた瞬間だった
自分の命って、意外と無用心だ
胸にナイフが刺されば、それで人生オワリ
足が震えだす
声も出なくなる
心臓が口から飛び出すくらいに激しく脈打つ
死ぬかもしれな
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ