第三章
[8]前話
そこにある文章を見てだ、彼等は首を傾げさせて話をした。
「この文字は何だ?」
「民衆文字と神官文字が混ざっているぞ」
「しかも書いている内容がな」
「訳がわからない」
「一体何を言いたいんだ」
「よくわからないな」
そこにある一文を見て言うのだった。
「どうにもな」
「わからないぞ」
「この文章は誰が書いたんだ」
「意味のわからない文章だ」
「ここに眠るファラオと何か関係があるのか」
「意味不明だ」
こう言い合うのだった、だが。
そのいぶかしむ彼等を見てだ、ファラオの魂魄は神官達の魂魄、古代エジプトでバ等と呼ばれた存在になって言われていた。
「読まれたではないですか」
「御覧の通り」
「まさか何千年も後で言われるとは思いませんでしたが」
「あれこれ言われていますぞ」
「ですからお止めしたのに」
「困ったことになっていますぞ」
「ううむ、まさか今になって見られるとはな」
ファラオの魂魄もだ、困った顔で腕を組んで述べた。
「余も思わなかった」
「全く、それで何と書かれたのですか?」
「民衆文字も神官文字も他の字も混ざっていますが」
「あれはどういったものでしょうか」
「何と書かれていますか?」
「いや、ただ文字を適当に書いただけでだ」
ファラオはその落書きのことを話した。
「何も意味はない」
「左様ですか」
「何でもないのですか」
「思いつつままの単語を適当に書いただけだ」
それがその落書きだというのだ。
「文字も変えてな」
「それだけですか」
「まことに」
「うむ、それがあの者達を騒がせるとはな」
「流石のファラオもですか」
「思いもつかれませんでしたか」
「何千年も後のことなぞ余にもわからぬ」
全く、というのだった。ファラオも。
「ピラミッドのことはともかくとしてな」
「ピラミッド自体もあれこれ言われていますな」
「何かと」
「あれこれとな、まさかこうしたことになるとはな」
ファラオは神官達と共にピラミッドの中を研究者の目をきらきらと輝かせてあれこれと言っている後世の学者達を見て述べた、まさかこうなるとは夢にも思わなかったという顔で。
ピラミッド 完
2014・5・19
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