第五章
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「それじゃあね」
「うん、そうしていこう」
「いつも二人でいて」
「それで練習をもっともっとしてね」
「ペアの大会に出るのね」
「そうしよう」
それぞれのシングルでなく、というのだ。こう話してだった。
二人は部活の間ずっと一緒にトレーニングをして滑ることになった、しかも練習の量はこれまでもよりもずっと増やした。
それでだ、部活の間だけでなく。
二人は登下校も昼休みも一緒にいる様にした、そうしてスケートのことやお互いのことを話して理解を進めていった。
その二人にだ、周りは若しかしてと思いこう尋ねもした。
「あんた達若しかして」
「付き合ってるとかか?」
「そういう関係?」
「部活を通じて」
「いや、そう言われると」
「それはね」
交際しているかどうかについてはだ、二人は然程戸惑わず答えた。
「俺達ただ部活をしているだけだから」
「ペアの大会に出たいから」
「それだけだからな」
「ちょっと、付き合っているかっていうと」
「違うよ」
「そういうのじゃないから」
こう答えて否定するのだった。
「ただ、本当にさ」
「ペアの大会に出たいから」
「こうして一緒にいてお互いの息を合わせて」
「演技のレベルを高めたいのよ」
「それだけだから」
「そんな付き合ってるとかじゃないわよ」
これが二人の言葉だった、そして実際にだった。
二人は交際とかそういうことは抜きにして、二人の方から考えずにだ。ただひたすら大会に一緒に出ることに集中した、それでだった。
確かにスケートのレベルは上がった、津山も二人に言った。
「いい感じだ、これならな」
「大会にもですか」
「出られますか」
「出ることは誰でも出られる」
二人ならば、というのだ。
「しかし見事な演技が出来るかというとだ」
「それが、ですよね」
「問題ですよね」
「少し前までの二人はそこまではな」
至っていなかったというのだ、だが今は。
「いける、これならな」
「はい、それじゃあ」
「これからは」
「ああ、出てだ」
そして、というのだ。
「いい演技が出来る、頑張れ」
「わかりました、それじゃあ」
「出させてもらいます」
「曲は何だ」
二人が共に舞う曲は、というのだ。
「どの曲にするんだ」
「はい、その曲は」
二人は津山に同時に答えた。
「白鳥の湖です」
「あれか」
「はい、どうでしょうか」
淳は津山の目をじっと見て彼に問うた。
「あの曲で」
「いいと思う、あの曲でな」
「バレエの名作で」
「名作だけのことはある」
そうした曲だというのだ、白鳥の湖は。
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