第五章
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「だからだ、私はまた貴女に菫を贈るし」
「貴女自身もなのね」
「常にその身に飾る、私が生きている限り」
こう言ってだった、ナポレオンはその愛称を笑顔で受け入れながら菫に手を触れるのだった。
ナポレオンは菫と共にあった、そしてだった。
ロシア遠征で惨敗しライプチヒでも敗れた、その結果だった。
彼は退位しエルバ島に流されることになった、だが彼は彼を悲しそうな顔で見ているフランス国民達にこう言った。
「安心してくれ、私は必ず帰って来る」
「必ずですか」
「この国に」
「そうだ、菫の花が咲くまでにはだ」
ここでも菫だった。
「私は必ず帰る、だからだ」
「陛下を待っていていいのですね」
「ここで」
「私は菫と共にある」
それ故にというのだ。
「その時までには帰ろう」
「では我々も」
「菫と共にあります」
彼等はナポレオンに約束した、そのうえで彼を見送ったのだった。
それからだ、彼等は密かにだが口々にこう言い合った。
「皇帝陛下の為だ」
「そうだ、あの方は花が咲く頃にはと仰った」
「それならな」
「我等はそれを適えよう」
「菫の花が咲く頃までに」
「皇帝陛下をまたお迎えするぞ」
「百合じゃない」
ここでこう言った者もいた、ブルボン朝が百合である。この家は古くより百合とその白い色を彼等の象徴としてきたのだ。
それでだ、彼はあえてこれを話に出したのだ。
「菫だ、フランスに必要なのは」
「その通りだ、皇帝陛下の花は菫だからな」
「何がブルボン朝だ」
彼等はナポレオンを信じるがブルボン王家は信じていなかった、それでこうした言葉も出して菫を飾ってだった。
ナポレオンが戻って来る為に行動を続けていた、彼等のその服にもナポレオンと同じく菫の花がありそれを目印にしてだった。
互いに連絡を取り合っていた、その頃ウィーンでは欧州各国がナポレオン後の秩序を再構築すべく話し合いを続けていたが。
「全く話は進んでいないらしいな」
「各国の主張がぶつかり合ってな」
「ダンスと菓子に興じてばかりらしい」
「確かに会議は踊っている」
実際にダンスも行われていた、それも派手に。
「しかし進まない」
「各国の目はそこにばかりいっている」
「皇帝陛下のことは忘れている」
そのナポレオンの後のことを話しているというのにだ。
「フランスもがら空きだぞ」
「では今だな」
「ああ、今のうちにだ」
「皇帝陛下をお呼び出来る」
「時が来たぞ」
こう話してだ、そしてだった。
彼等は動きを活発化させた、そしてだった。
ナポレオンも欧州の状況に気付いた、それでだった。
エルバ島を脱出しフランスに向かった、彼が上陸すると征伐すべき軍が次々と彼の方に寝返ってだった。
ナポレオンは
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