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スミレ伍長
第五章
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一度も戦うことなくパリに戻って来た、その彼を菫を服に挿した群集達が笑顔で迎えた。
「伍長閣下がお戻りになられたぞ!」
「スミレ伍長のお帰りだ!」
「陛下、ようこそ!」
「よくぞ戻られました!」
 彼等は歓声でナポレオンを迎えた、それは春のことだった。ナポレオンはその言葉通り菫の花が咲く頃に戻って来た。
 そしてチェルニー宮殿に入るとだ、宮殿は。
 菫達で飾られていた、ナポレオンはその花で飾られた宮殿に戻ってから笑顔で言った。
「私は約束を果たしたな」
「はい、お言葉通り」
「菫の花が咲く頃に戻られましたね」
 周りの者達がその彼に笑顔で応えた。
「春に」
「そして今も」
「ジョゼフィーヌのことはな」
 既に別れている、今も愛していても。だからナポレオンはこのことには苦いものを含めて言ったのである。
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