第四章
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「僕も好きになってきたよ」
「菫の花がなのね」
「そうだよ、見ればこんないい花はないね」
「薔薇ではないのね」
ジョゼフィーヌは無類の薔薇好きでも知られている、それでナポレオンに対してこの花のことも問うたのである。
「そちらのお花では」
「あの花も好きだよ、けれどね」
「菫の方がなのね」
「貴女を励まし救ってくれた花だから」
だからだというのだ。
「この花を貴女だと思って大切にするよ」
「そうしてくれるのね」
「これからずっとね」
ナポレオンはジョゼフィーヌに笑顔で話した、そして実際にだった。
ナポレオンは常に菫の花をその服に飾る様になった、そして己の紋章も菫の花にしてしまった。まさに菫は彼を象徴するものになったのだ。
そのナポレオンを見てだ、フランス人達はこう言うのだった。
「また菫を付けておられるな」
「ああ、今日もな」
「皇帝陛下は菫がお好きだよ」
「菫はあの人の花だな」
「あの人は菫伍長かい?」
誰かがここでこんなことを言った。
「軍人さんから皇帝になったし」
「ああ、だから伍長さんか」
「それでか」
「何か伍長っていうと親しみがあるだろ」
庶民である彼等にとってはだ、皇帝よりもだ。
「わし等の英雄にとってはな」
「確かにな、そんなに背も高くないし」
彼等の平均よりも少し高い程だ、逞しい近衛兵や騎兵士官達に囲まれると実に小さく見える。だからナポレオンは小柄と思われているのだ。
「お顔とかお姿もな」
「親しみやすいしな」
「だから伍長さんか」
「そうなるんだな」
「そうだよ、あの人はスミレ伍長だよ」
その誰かはナポレオンを見ながら笑顔で言った。
「わし等の英雄だよ」
「そうか、あの人はスミレ伍長か」
「あの人の愛称はそれだな」
「それがいいな」
忽ちのうちにこの愛称は広まり定着した、そこに親しみがあるからだ。
この愛称のことは当人の耳にも入った、皇帝である彼は皇后となったジョゼフィーヌに対して笑顔でこう言った。
「面白い仇名じゃないか」
「伍長でもいいのね」
「ははは、そこがまたいいんじゃないか」
明るく笑ってこう言うのだった。
「私に親しみを感じてくれているからね」
「だからいいのね」
「菫を忘れないところがまたいい、いや」
「いや?」
「それを最初に持って来てその後で親しみを込めて伍長と呼んでくれるのが」
「いいのね」
「気に入った、いい愛称だ」
ジョゼフィーヌに笑顔のまま話す、そしてだった。
今も服に付けてある菫に触れてかららだ、彼女にこうも言った。
「そろそろまた誕生日だが」
「それではなのね」
「また菫の花束を贈りたいがいいかい?」
「ええ、是非そうしてくれるかしら」
ジョゼフィーヌもナポレオン
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