第三章
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「有り難うございます」
「そうですか、そういえば奥様は二度結婚すると言われたそうですね」
「はい、そうです」
「ではこれからですね」
前夫は処刑されている、それならだった。
「二度目の結婚をされますね」
「そう言われていますね」
「しかも二度目の結婚では女王以上の存在になると」
「占いではそう言われています」
「ではそうなられて下さい」
看守は明るい笑顔でジョゼフィーヌに言った。
「そうされて下さい」
「そうなればいいですね」
「絶対になります、では」
「はい、貴方達の心使いは忘れません」
このことは絶対と言ってだった、そのうえで。
ジョゼフィーヌは菫の花束、少女が贈ってくれたそれを手に牢獄を出た。それから彼女の人生はかなり動いた。
総裁政府の首魁の一人バラスの愛人になったりしていたがやがてだ、一人の普通のフランス人より少し背の高い士官と出会った、その士官はというと。
外見はどうにも野暮ったい、軍服の着こなしもだ。背はそれ程低くはないのに身体つきは決して逞しくはなく冴えなさも感じられる。
話をするとフランス語にも訛りがある、彼はジョゼフィーヌにこう名乗った。
「ナポレオン=ボナパルトといいます」
「ボナパルト将軍ですね」
「はい、先日任命されました」
士官はこうジョゼフィーヌに名乗るのだった。
「砲兵を指揮しています」
「左様ですか」
「はい、それでなのですが」
見ればそのナポレオンという男の視線は熱い、その目でジョゼフィーヌを見ながら彼女に話していた。
「奥様、貴女のお名前は」
「ジョゼフィーヌといいます」
微笑みを作ってだ、ジョセフィーヌはナピレオンに答えた。
「宜しくお願いしますね」
「はい、是非」
外見は野暮ったいと思った、だが。
その彼に何故か感じたジョゼフィーヌだった、そうしてだ。
ナポレオンの熱烈な告白を受けて彼と結婚した、それからだった。
ジョセフィーヌの誕生日にだ、ナポレオンは彼女にあるものを贈ってくれた。それは一体何だったかというと。
「菫の」
「そう、菫の花束だよ」
ナポレオンは手にしているそれを笑顔でジョセフィーヌに差し出しつつ言った。
「これを貴女に」
「まさかと思うけれど」
「話は聞いたよ」
微笑んだまま言うナポレオンだった。
「貴女は牢獄に入れられていた時にこの花束を贈られていたね」
「ええ、菫のね」
まさに紫のこの花をと答えたジョゼフィーヌだった。
「そうだったわ」
「だからだよ」
「誕生日に私に」
「この花を贈りたい、いいかな」
「有り難う」
ジョゼフィーヌはその菫の花束を受け取った、そのうえでナポレオンに答えた。
「受け取らせてもらうわ」
「僕もそう言ってもらえて嬉しいよ。何かね」
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