第二章
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ジョゼフィーヌのいる牢獄のその部屋に一人の少女が来た、ジョゼフィーヌはその少女を見て彼女と共にいる看守に尋ねた。
「この娘は」
「はい、私の娘です」
「貴方のですか」
「この娘に持って来てもらいました」
ジョゼフィーヌに対して微笑みを向けてだった、看守はこう答えた。
「それを」
「その贈りものをですね」
「そうです」
「あの、それでなのですが」
少女もジョゼフィーヌに言ってきた、楚々として綺麗な声である。
「奥様にこれを」
「それは」
少女がジョゼフィーヌに差し出してきたのは花束だった、その花はというと。
紫の小さい花達だった、ジョゼフィーヌはその花達を見て少し驚いた様な顔になり看守と彼の娘に言った。
「菫ですね」
「はい、この花がです」
「私への贈りものですが」
「つまらないものですが」
それでもと言う看守だった。
「宜しければ」
「・・・・・・・・・・」
ジョゼフィーヌは少女が差し出してきたその菫の花束を前にして一時沈黙していた。少し手を伸ばせた牢獄の柵から手を出して貰える。
しかし今は沈黙していた、だが少し時間を経てだった。
少女から菫の花束を受け取った、そうしてそれを胸に抱き微笑み二人に言った。
「この上ない贈りものを有り難うございます」
「気に入って頂けましたか」
「花はどの花も好きです」
ジョゼフィーヌは薔薇を最も愛している、しかしどの花も好きなのだ。
勿論菫もだ、だが彼女は今はその菫にあるものを見て看守と少女に言ったのだ。
「ですがそれ以上に今はです」
「今はといいますと」
「貴方達の心を受け取らせてもらいました」
微笑んでの言葉だった、その花束を抱いたうえでの」
「ですから」
「それで、なのですか」
「この花束を頂いたことは忘れません」
「左様ですか」
「まことに有り難うございます」
その微笑みは心からのものだった、そしてその花束を抱き言うのだった。
「では希望を持って」
「はい、今は耐えられて下さい」
看守は優しい笑顔でジョゼフィーヌに彼の言葉を返した、そうしてだった。
やがて状況が変わった、看守はジョゼフィーヌにこう声をかけた。
「あの、間もなくです」
「間もなくとは」
「奥様は釈放されることになります」
「何かあったのでしょうか」
「ロベスピエールが死にました」
このことをだ、彼はジョゼフィーヌに告げた。
「それで恩赦が出されることになりました」
「だからですか」
「はい、奥様は釈放されます」
そうなるというのである。
「おめでとうございます」
「そうですか、よかったです」
恩赦のことを聞いてだ、ジョゼフィーヌはほっとした顔になり看守に言葉を返した。
「貴方の仰る通りになりましたね」
「
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