第一章
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スミレ伍長
かつての夫が罪に問われたせいでだった。
ジョゼフィーヌ=ド=ボアルネは牢獄の中にいた。その牢獄の中から自分の部屋の前にいる看守に対して問うた。
「あの人はもう」
「はい、先日です」
その別れた夫がどうなったかはだ、看守が丁寧に話してくれた。
「旅立たれました」
「そうですか」
ジョゼフィーヌはそのことを聞いてだった、まずは目を伏せた。
そうしてからだ、目を開いてから彼に言った。
「夫婦仲は悪かったですが」
「それでもですか」
「冥福を祈ります」
こう言ったのだった。
「心から」
「左様ですか、しかし」
「しかしとは」
「マダムは今どう思われていますか?」
看守はジョゼフィーヌ自身に彼女の心境を尋ねた。
「やはり不安ですよね」
「どうしてもそうなりますね」
ジョゼフィーヌは看守に落ち着いた声で答えた。
「こうした時代ですから」
「旅立たれると」
「既に多くの人がそうなっていますね」
「はい、市民ルイ=カペー夫妻といい」
かつての国王夫妻だ、ルイ十六世とマリー=アントワネットは既に断頭台の露となりこの世を去っている。
「その他にもです」
「ダントンさん達も」
「そうなっています」
「ですから私も」
その不安を感じているというのだ。
「二度結婚すると言われていますが」
「二度、ですか」
「はい、二度です」
結婚すると言われているのは確かだ、占い師に言われたことだ。
「一度目の結婚では不幸になり二度目の結婚では女王以上の存在になると」
「ではマダムは今はです」
「死なないというのですね」
「牢獄に入っても死ぬとは限りません」
確かにその可能性はかなり高いにしても、というのだ。
「ですから」
「私は死にませんか」
「ここだけの話になりますが」
看守は微笑みその声を小さくさせた。何しろ誰彼なしに断頭台に送られる時代なので無意識のうちに用心したのだ。
「不安になられずに」
「そうしてここで過ごしてですね」
「次の結婚で幸せになられて下さい」
「では私は死なないと」
「私もそう思います、何でしたら」
看守は自分からジョゼフィーヌに言った。
「元気になられるものをお渡ししますが」
「私の心がですか」
「はい」
まさにそうしたものをだというのだ。
「そうさせて頂いて宜しいでしょうか」
「それは一体何でしょうか」
看守からの言葉にだ、ジョゼフィーヌは怪訝な顔になって言葉を返した。
「私の心が元気になるものとは」
「大したものではないですが」
それでもという看守だった。
「悪いものではない筈です」
「そうなのですね」
「では宜しいでしょうか」
看守はあらためてジョゼフィーヌ
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