暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
とある夜の出会い
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を悟っていた。

ゲームであっても遊びではない。その矛盾した真実を。

低い唸りとともに降り下ろされた棍棒が、棒立ちになったシリカを襲った。強烈な衝撃に耐え切れず、地面に倒れてしまう。HPバーがぐいっと減少し、黄色い注意域へと突入する。

もう、何も考えられなかった。

走って逃げる。転移結晶を使う。

取り得る選択肢はまだあったのに、シリカは呆然と三たび振り上げられる棍棒を見つめることしかできなかった。

粗雑な武器が赤い光を放ち、反射的に眼を閉じようとした。

その寸前──

空中で、棍棒の前に飛び込んだ小さな影があった。

重苦しい衝撃音。エフェクト光とともに水色の羽毛がぱっと散り、同時にささやかなHPバーが左端まで減少した。

地面に叩きつけられたピナは、首を上げ、つぶらな青い瞳でシリカを見つめた。

一声、小さく「きゅる……」と鳴いて──直後、きらきらしたポリゴンの欠片を振りまきながら砕け散った。

長い尾羽が一枚ふわりと宙を舞い、地面に落ちた。

シリカの中で、音を立てて何かが切れた。

全身を縛っていた見えない糸が消滅した。

悲しみより先に、怒りを感じた。たかが一撃喰らっただけでパニックを起こし、動けなくなってしまった自分への怒り。

そしてそれ以前に、ささいなケンカでへそを曲げ、単独で森を突破できると思い上がった、愚かな自分への怒りを。

シリカは俊敏な動きで飛び退り、モンスターの追撃をかわすと、叫び声を上げながら敵に猛然と襲いかかった。右手の短剣を閃かせ、猿人の体に次々と叩き込む。

仲間の体力が減ったと見るや、再び割り込もうとしてきた最初のドランクエイプの棍棒を、シリカは避けずに左手で受けた。

直撃ほどではないがHPバーが減少する。しかしそれを無視し、あくまで三匹目、ピナを殺した敵を追う。

小さな体を活かして懐に飛び込み、全身の力を込めて短剣を猿人の胸に撃ち込んだ。

クリティカルヒットの派手なエフェクトと同時に、敵のHPが消滅した。

悲鳴。直後に破砕音。

爆散するオブジェクトの破片の中、シリカは振り返ると、無言で新たな目標へと突撃した。

ゲージはすでに赤い危険区に突入していたが、それすらもう意識しなかった。

狭窄した視界の中に、殺すべき敵の姿だけが大きく広がった。

死の恐怖すらも忘れ、降り下ろされる棍棒の真下に無謀な突撃を強行しようとした時──

シリカは、二匹並んだドランクエイプがどちらも硬直していることに気付いた。

直後、目の前で猿達の体が上下に分断され、次々と絶叫と破壊音を振りまきながら砕け散った。

呆然と立ち尽くしたシリカは、オブジェクト片が蒸発していくその後ろに、一人の男の子が立っているのを見
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