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ていた。

「――また消えたよ、ルシル」

その空間の中に、大人のような凛として、しかしその中に子供のような幼さの残る女性の声が響く。この空間の中央。巨大な肘掛椅子に腰かけている女性から発せられたものだ。
アースガルド王族特有の銀髪は膝裏まであるロングストレート。セインテスト王家特有のルビーレッドとラピスラズリの虹彩異色。足首まであるロングファーコートを着ていて、生地や毛皮の配色からしてまるでサンタクロース。コートは下腹部から前を閉じておらず、黒のタイトスカートと黒のタイツを晒している。茶色い編み上げのロングブーツを履いているスラリと長い足は組まれている。

「一応ここ英雄の居館(ヴァルハラ)を含めた創世結界の管理者をあなたから任されているけど、あなたの異界英雄(エインヘリヤル)の1人には変わりないから、消失は防げないの」

その女性が、自身の前にあるもう1つの肘掛椅子に座る銀髪にルビーレッドとラピスラズリの虹彩異色の青年・ルシリオン(オーディン)に哀しげに告げる。ここはルシリオンの精神世界に展開されている創世結界のひとつ、“英雄の居館ヴァルハラ”。その玉座の間だ
ルシリオンは「ごめんなさい、ゼフィ姉様」と、申し訳なさそうに頭を下げた。ゼフィ姉様。ゼフィランサス・セインテスト・アースガルド。ルシリオンの実姉だ。ルシリオンの使い魔とも言える“異界英雄エインヘリヤル”の1人だが、その自我は確固として独立しているため、姉として精神世界からルシリオンを支えるために存在し続けている。
“異界英雄エインヘリヤル”とは、ルシリオンの固有能力・複製によって複製された武器・魔術・魔法・能力・技術・知識などの持ち主を魔力で構築し、彼の使い魔とされたものだ。

「失ったエインヘリヤルはこれまでに4116体。失った複製武器は2081本。失った複製技術・魔法・能力は計19449個。全体の2%くらいだけれど、半年で2%はちょっと多いかもだから気を付けて」

「・・・・そんなに・・・・失ったのですか、私の思い出・・・。くそっ、誰を、何を忘れたのか思い出せないっ!」

ルシリオンは肘掛を思いっきり拳で殴り付けた。表情は泣く一歩手前。だが泣かないように必死に堪えている。ゼフィランサスは忙しなく立ち上がり、ルシリオンの元へと駆けつけ、その胸に彼を抱き寄せた。

「お姉ちゃんの前でくらい弱くなってもいいんだよ。強がらないでいいの」

「いえ。私は強くあり続けなくてはいけません。これが最後のチャンスですから。ガーデンベルグ達を救い、私が人間に戻れる、最後の・・・。どれだけ辛くとも苦しくとも、私は立ち止まることも振り返ることも後戻りすることも出来ない、したくない」

ルシリオンはそう言ってゼフィランサスの腕を取って離れる。すでに泣き顔ではなく、キリ
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