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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
闖入劇場
第八六幕 「クイーン・セシリア」
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対する抗議活動を続けてきたわ。団体のメンバーも1万人を超えてるし、実績があるの」
「そうですか!だから日本はここ数年の男女間の賃金格差が大幅に広がって雇用差別が先進国中最悪になっているのですね?勉強になりますわ!」

団体メンバーの眉間のしわが過去最高まで深くなった。セシリアの言っていることは現実に日本で問題になっている事である。職場でのパワハラや賃金格差逆転などがGDPの伸び代を潰しているのは公然の事実であり、「やりすぎ」であることは明白。これでそちら方面の知識が少ない人間ならば勢いで押し流されるところだが、残念なことにセシリアには漬け込む隙など一部もない。
ここまで来ると向こうも引き下がれない。完全に火がついているのか段々セシリアに迫る態度が高圧的になってゆくが、相手がIS持ってると知ったら腰を抜かすかもしれない。何だか見てるこっちが不安になって来たなー。

「・・・・・・まだ、分かってもらえないのね。貴方も男女平等とか唱えちゃう子なのかしら?あのね、この国は昔から根拠のない男主導社会を―――」
「―――ああ、回りくどくて伝わりませんでしたか?ではいい加減ハッキリ言っておきましょう」

メンバー達のいら立ちが最高潮に達し始めたことを知っている上で無視して言葉を止めるセシリアの豪胆さに野次馬の一部が口笛を吹いた。こんなに肝っ玉の据わった女の子、世界中探してもそうそういないだろう。
セシリアは明らかに作り笑いであることが明白な笑顔で、きっぱり言い放った。


「私は他人に考えを強制されるのが死ぬほど嫌いなので―――私の往く道を遮らないでいただけます?」


その瞬間、セシリアの身体から発せられる威圧感が周囲のあらゆる意志を容赦なく押し潰した。
女性権利団体のメンバーは生唾を呑み込み、肩を震わせ、しかし彼女たちの身体は恐怖に縛られたようにピクリとも動かなかった。
セシリアが、通りすがりで男どもにちやほやされていそうなだけの小娘が、今だけはとてつもなく巨大な、人間が逆らってはいけない存在に思えてしょうがなかった。彼女に口答えしてはいけない、彼女の邪魔をしてはいけない、彼女を怒らせてはいけない。

たった一人の可愛らしいと言える少女に、彼女たちの精神は完全に屈服した。いや、彼女だけでなく軽い気持ちで見に来た野次馬でさえ、そのプレッシャーに息を乱して膝をつく者が現れた。
それは人に命令を与える、選ばれた存在の風格。気品と貴意と美と品性と、そして揺らぐことのない鋼鉄の意思を湛えた瞳。絶対者にして仕える主であることを否応なく感じさせるそのプレッシャーは―――まるで、女王(クイーン)。息をする事さえ憚られるほどの、絶対の命令に思えた。


彼女を止められる存在などこの世になく、彼女に並ぶ存在など―――






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