暁 〜小説投稿サイト〜
リリカルなのは〜優しき狂王〜
2ndA‘s編
第九話〜見え始めた全容〜
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ろう、その主の行動は褒められる行為である。ある意味で間違っていなかったその主の間違いは、人の欲の深さを知らなかったことだ。

「夜天の書を生み出した主が亡くなり、長き時が流れた。その間に様々な人間が新たな主となり、多くの者の手から手へと渡っていくうちにそれは元来の目的から大きく逸れた」

 悪意ある改変、更には記録した魔法の中に『無限転生』についての情報も含まれていたことにより、夜天の書の存在意義は大きく変わってしまった。
 溜め込んだ魔法の術式と魔力は、夜天の書のページが全て埋まると世界を滅ぼすために破壊という結果を生み出し、そして次の主のいる世界へ渡る。それを幾度も繰り返すうちに、『夜天の書』という名前はいつの間にか『闇の書』という悪名にすり替えられてしまう存在にまでになる。

「それでも人は力を求めた。多くの者が自分なら大丈夫という根拠のない確信を抱き、そして死んでいった。幾度もそれを繰り返し、私や守護騎士達も心をすり減らしていった。そんな中、私たちは出会ったのだ」

 ここまで淀みなく動いていた口が止まる。
 それは自分がその事を語れば、それが汚れてしまうのではないかと言う彼女の恐れと躊躇。そんな彼女の気持ちを察したわけではないが、ライが彼女の言葉を引き継ぐ。

「今の主、八神はやてに出会った」

 瞳に貯めた涙で頬を濡らす彼女には、その言葉に頷きで返すことしか出来なかった。
 ここまでの話でライは今回の事件についての全体像をようやく掴むことができた。しかしその事に達成感はなく、寧ろ解決しなければならないハードルは上がる一方で頭を抱えそうになる。

(現状ではやてを救う方法は、彼女から夜天の書を破棄させること。だが、ネックとなるのは防衛プログラムの存在による外部からのアクセスの遮断と、ヴォルケンリッターの存在……それに……)

 そこまで考えると、ライは目の前に居る彼女を覗い見た。

(知ってしまった以上は、彼女を切り捨てたくない)

 それはライの本心であった。
 誰かの為に必死になりつつも、自分という存在をどこか蔑ろにしようとする彼女の姿が黒髪でアメジスト色の瞳を持つ友達を連想させた。

(僕がいたこの時間軸からして未来の世界に彼女という存在はいなかった。でも、ヴォルケンリッターやはやてはいる。なら助ける方法は何がしか存在したはずだ)

 自分が知り得るこれまでの情報と未来の情報から、必要となる要素を汲み取ろうとしているとふとした疑問が湧いてきた。

(ヴォルケンリッターのあの人たちが蒐集を行っているのは、過去の夜天の書が完成された時の記憶がないから…………なら、夜天の書の完成時にその場にいなかった?)

 そのことについて、一瞬その部分の記憶が消去されているとも考えたが、それは自分
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