暁 〜小説投稿サイト〜
リリカルなのは〜優しき狂王〜
2ndA‘s編
第九話〜見え始めた全容〜
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る話を黙って聴き続ける彼女は、話が進むに連れてその瞳に悲しみを浮かべる。その事に気付きながらもライは口を動かすのをやめなかった。
 どのくらいたったのかは相変わらず分からない空間であったが、少なくない時間が流れライはここに至るまでの経緯を話し終える。

「……」

 物事の進展が遅々として進んでいなかったことに対しての鬱憤も溜まっていたのか、全てを語り終えると気持ちが少し軽くなり、ちょっとした放心状態になる。
 しかし、呆けていてはどうにもならないため、ライは自分の中の一番の疑問を解くところから開始した。

「貴女がヴォルケンリッターに関係のある存在であることは予測できる。その上で聞きたい。貴女は自らの主を“何”から救いたいのかを」

「……その問いの答えは簡単だ。主を“私”という存在から救って欲しい」

 その言葉を理解するのに数秒を使った。
 そして意味を理解し、いくつもの予測が湧き出てくるとそれに合わせる様にライの表情が歪んでいく。

「察しがいいのだな、お前は」

「っ!」

 どこか儚げな笑みを浮かべながら、彼女はライを真っ直ぐに見据えながらそう言う。呑気に感じる彼女の言葉に噛み付きそうになるが、必死に押さえ込むようにして口から出そうになった言葉を飲み込んだ。
 思い当たった。
 理解が及んだ。
 辻褄があった。
 言葉などなんでもいい。ライにとっては今目の前にいる彼女とその主との関係が最悪の状態であり、そして彼女がそれを肯定してしまった事が重要なのである。

「貴女という存在……『夜天の書』そのものが主であるはやてを蝕んでいる?」

 否定して欲しい予測はしかし、首肯という簡単な仕草を持って返される。
 リンディから聞いたこの次元世界の管理局側が記録している闇の書に関する事件の概要、そして守護騎士であり本体のプログラムでありながら夜天の書と言う本当の名を失ってしまっているヴォルケンリッター、そしてその夜天の書に深く関わっているであろう彼女自身が望む主の救済。
 ここまでの要素が揃ったが故にライがその考えに行き着くのは難しいことではなかった。

「……元来、夜天の書とはどんな存在なんですか?まさか、始めから世界を滅ぼすために造られた物ではないはずです」

「当たり前だ。元々あれは次元世界に存在する様々な魔法を記録するために生まれてきた。そして歴代の主の誰かが膨れ上がったその魔法の知識の漏洩を恐れ、セイフティーを組み込んだ。それが防衛プログラム」

 その主も元々は完全な善意からそれを施したのだろう。
 そのプログラムも最初は『防衛プログラム』という名称すらなく、主以外のアクセスを受け付けなくするというものでしかなかった。
 自分の持つ知識の大きさと重みを十分に理解していたであ
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