2ndA‘s編
第九話〜見え始めた全容〜
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海鳴市・郊外
どんなに悩み、どんなに葛藤を抱き立ち止まりそうになっても時間は進む。
それを実感するように、ライは登ってきた太陽の日差しに目を細めた。
(…………忘れてしまえれば、楽なのに)
脳裏に映るのは、やはり女性の泣き顔。自分がこの世界で初めて心の内に踏み込んだ女性。
何故、あそこまで彼女に対して踏み込んだのか自問する。
今じゃなくて、昨日を見ていると感じた。
引き返せる場所に立っていると感じた。
自分の前で、同じ悲劇を見たくないと感じた。
そして、何よりも自分に似ていると感じた。
「…………なんて……身勝手……」
今度は考えが言葉として漏れる。
どこか自嘲気味に唇を引き結び、彼は歩き始めた。
冬の日の出が遅いといっても人が活動を開始するにはまだ早い時間帯なのか、彼の周りには人の姿が見えない。
冷たく澄んだ空気が、痛みとして寒さをライの頬や耳に伝えてくる。その寒さを振り払うように、肩で風を切るようにして歩調を早めるライ。
そして、郊外の海沿いにある海に面した道路にまで来ると、突然その足を止めた。
「……」
ゆっくり振り返ると、そこには一匹の四足獣が朝の日差しを受けながらそこにいた。
(ザフィーラか)
いくら早朝といえども、その場所は人目につきやすいと感じたライはその足を近場にある海に面した林に向かう。
あっさりと背中を見せたことに、ザフィーラは一瞬躊躇うような仕草を見せるが、そんな反応を視界に収めているわけでもないライは、歩調が乱れることなく進んでいく。
これ以上は見失うと思ったのか、ザフィーラもライの向かった方に素直についていった。
そして林の中に都合よく開けた空間があった為に、そこでライは足を止め、再び自分の後ろをついてきた狼に相対しなおす。
「闇の書の守護騎士か?」
まず口火を切ったのはライであった。
その内容は質問というよりは確認であったが。
「正確には守護獣だ」
簡素な質問に簡素な応答。実にシンプルなやり取りであるが、それがお互いの思考の無駄を削ぎ落としていった。
「貴様は管理局の魔導師か?」
「魔導師であることは否定しないが、闇の書に関わっていると思われるある人物を探しているだけで、管理局は関係ない」
この回答は少々意外だったのか、ザフィーラの目が少しだけ細まった。
「こちらとしては、そちらに干渉する気はない。そちらもイレギュラーな存在にかまけている暇はないだろう?」
「……」
「こちらからの質問だ。白銀の長髪で赤い瞳の女性を知らないか?」
「!」
今度の反応はより顕著であった。その反応を見ただけで、ライは自分が探している女性がヴォル
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