あの純白なロサのように
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うか、陽も悲しみに顔を伏せ、死を司る夜が来て、俺はやっと顔を上げた。
その頃には荒くれる感情も少しは整理できていた。
まずは、弟を埋めてやらなればならない。父と母眠る場所へ。
ずっとずっと、父に、母に、会いたがっていた弟。今は三人で仲良く、笑っているんだろうか…。
それには花も居る。花…ロサの花がいい。寂しくないように、沢山…。弟は「お姉さん」がとても好きだったから…。
俺の足は自然とロサの泉に向けられた。
「お姉さん」、か…。
不意に満面の笑みで弟を迎える女の笑顔が浮かんだ。
悲しいことを、俺はあの女にも伝えなければならない。弟が死んだと。…死んだ?俺ですらまだ実感できていないというのに。ましてあの女は、唐突すぎる話にきっと嘆き涙するだろう…。悲しませてしまうのは忍びないが、隠していても仕方が無い。俺では弟の代わりは務まらないのだから。
そういえばパレードに走り出した弟は何を勘違いしたのだか「お姉さん」と言って居た。弟がお姉さんと呼ぶのは唯一人だけだ。王族しか連なれないあのパレードに、「お姉さん」が居たとでも言うのか?そんな馬鹿な…。
それにしても、弟を躊躇なく斬り殺した白銀の甲冑を着た騎士…。改めて考えると沸々と沸き立つ怒りで体が震えた。奴にしたら、王を守るという当然の役割を果たしただけだとわかっている。でも、分別のつかない子供にまで剣を向けることが果たして正義なのか?何が騎士だ!王が何様だ!
…殺してやろうか。
物騒な考えが頭を過ぎる。
白銀の騎士は相当な腕だったが、俺の方が上な自信があった。
俺の父は生涯無敗で通したほどの強い人間だった。その父に鍛えられていた俺が、牙を抜かれた王宮の騎士などに負ける訳がない。
考えれば考えるほど仄暗い泥沼に嵌まっていくようで、弟の居ない今、俺は一体どうすればいいのか、この先のことが全く見えなかった。
じりりと靴の下で白い花を磨り潰して、やっと俺はロサの泉に辿り着いたと気がついた。
考え事をしながら歩いていたから全くわからなかったが、確かに耳は清純な泉の音も拾っていた。気持ちを切り替えようと、鬱蒼とした思いを振り切り顔を上げた俺は、衝撃で息が止まった。
目の前には、女が居た。
そう、月明かりにプラチナブロンドの髪を染めて、いつかのように真っ青なドロワを着て、光溢れるロサの中に座り込んでいた。
違うのは、女がはじめからこちらを向いていたことと、いつになく至近距離に居る俺にも気がつかないぐらい激しく泣いていたことだった。
涙は頬を伝う間すら惜しいというように、光となって散っていた。
「ごめんなさい…!」
女はひたすら何かに向かって謝っていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」
噛みしめて真っ赤に
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