あの純白なロサのように
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んな奪い合うように買い求めただろう。運良く手に入れられたその内のひとりが、こうしてここに立っているだけ、それだけなんだ…。
六歩、七歩…他に、他に何か無いか?何でも良いんだ、何でも。あの中に俺の想像する人がいないとわかれば、それでいいんだ。
八歩、九歩…なぁ、だって、これが俺の想像通りの人だとしたら…そしたらあまりにも悲しすぎるじゃないか。それならなぜ王の元から逃げ出したんだ?愛する人の求婚を受け入れ、王妃として輝く未来は、そんなにも受け入れがたかったのか?ここで、こうして舞い戻ってくるぐらいなら…誰にも知らせず、国のために、息跡絶えるまでたった一人戦い続けるぐらいなら…ずっと育ってきた城で、仮面を落として王と共に生きていく未来を選ぶことが…どうして、できなかったんだ!
俺は、王に何と言えば良い…。
俺は歯を食いしばって足を進めた。そうしなければ嗚咽が漏れそうだったからだ。
馬鹿だ。ばかだばかだばかだ。みんな馬鹿だ。国民も、王も、彼女も、俺も!
どうして心の望むままに生きられない?
こうなってから後悔するなんて遅すぎる!
俺は、やっと甲冑を纏う人の前に辿り着いた。
それは大分小柄な人間だった。
細く折れそうな鎧の拉げたあちこちに、固く冷たい矢が突き刺さっている。どれだけ激しい戦いをしたのか。もうこれは、抜けはしないだろう…。
目の前の人は、今にも斬りかかりそうに剣を構え、足を踏ん張ったまま、凍り付いている。
手を伸ばし、そっと兜に触れる。いつだったか、俺は武術大会でこの兜を弾き飛ばしたことがあった。その下にある、白金に靡く髪も、青い大きな瞳も、俺はもう二度と、見ることは叶わないだろうー…。
俺は、ふと目に熱いものがこみ上げてくるのがわかった。
そうだ、兜をとるまでもない。これは彼女だ。
白銀の鎧を纏い、国のために無謀な賭けをし、立ったまま息絶えるまで戦うなんて、彼女以外の誰であるものか。
俺はその時、初めて彼女の愛の大きさを、深さを、真実の意味で知った。
彼女は、本当に、本当に心の底から王を愛していたのだろう。
そして、その王が愛するこの国を、どうしても守りたかったのだ。例えその命にかえても。
…対して俺は何をしていた?
彼女を重圧から解放し、ひとりの女に戻す?
笑顔を取り戻す?
とんだお笑い種だ!
彼女のため、彼女のため、と言い訳しながらも、それは全て、自分のためだった。
ああ、今更言い訳はするまい。
俺は彼女に惹かれていたのだ。
ロサの泉で笑顔を一目見たその瞬間から、きっと。
弟のため、彼女のため、王のため、国のため。いくら取り繕おうと、彼女をここまで追い詰めたのは、俺だ。
国中から氷の魔女と後ろ指をさされながら、しかし愛する王の傍に
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