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あの純白なロサのように
あの純白なロサのように
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なっていた。
 俺は馬を繋ぎ、砦を抜け敵国側に歩いていた。
 予想していたとおり、砦に待機させていたはずの兵は、ひとりもいなくなっていた。
 敵国の王は本当に見事だった。俺が見張りを置くというのもいらないと反対意見が出たほど、北山は冗談でなく断崖絶壁だらけだった。都を攻めるにしても普通の人間ならまず一番に除外するところだ。そこを、守りの穴としてあえて狙ったのだ。もし北山が落ちたと聞いていたなら、都はパニックに陥って、あっという間に敵国の手に渡っていただろう。
 しかし砦は戦闘の跡こそあれ無人だったが、北山から敵兵が雪崩れ込んできたという話は聞かないし、来る途中擦れ違うこともなかった。と、いうことは…。
 考え事をしていたら、丸太に足を取られて俺はひっ転んだ。
 ばふりと粉雪が舞い上がる。
 こんな道の真ん中に丸太が…誰かどかしておけば良いもの、を!?
 俺は嫌な予感にはっと立ち上がると、慌てて砦にとって返し、煌々(こうこう)と火をつけた松明を持って出てきた。
 震える手で、丸太の上の雪を払った。それは丸太ではなく足だった。凍り付いた人間の、足。更に払っていけば胴もあり、腕もあった。
 待て、待ってくれ…。
 そうだ、ここは道の筈なんだ。なのに何だ、ぼこぼこと盛り上がっているこの雪の山は?
 まさか…。
 当たって欲しくない予想ほど良く当たるものだ。それらは、全て、死体だった。
 何体あるだろう。十や二十はくだらない数の人が、折り重なるように死んでいた。
 俺は呆然と立ち(すく)んだ。
 死体の上を歩かなければ先に進めないほどに、狭い道には死が満ちていた。
 ここで戦闘が行われていたのは明らかだった。
 松明を高く掲げても、ささやかな明かりでは、遠くまで見渡すに至らない。
 全貌を知るには夜明けを待つしか無い。幸いにも、遠くに見える地平線はもう薄っすらと白んでいる。砦で待とう。そう思って、踵を返した俺は、息を止めた。
 砦の前に、人がいた。
 人だ。
 何故気がつかなかったのか、立ったまま、ぴくりとも動かない人がいる。
 爪先から頭の先まで、白銀の鎧を全身に纏ったー…。
 全身からすっと血の気が引いた。
 俺は、どのくらい経ったのか、時間の感覚を忘れるほど、その場に棒と突っ立っていた。
 太陽がゆっくりと夜を払い地を照らしてゆく。
 それに誘われるように、俺は震える足を踏み出した。
 一歩、二歩…臆病な俺は、夢を見ようとする。この鎧は、鎧だけで中に人は入っていないんだ、きっとそうだ。
 三歩、四歩…もしくは、この見慣れた白銀の鎧も、この剥き出しの剣も、この国が嫌になって逃げた持ち主が、道道の逃走資金にと売り払った物かもしれない。
 五歩、六歩…王から下賜された物だから、それはいい素材で出来ている。み
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