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あの純白なロサのように
あの純白なロサのように
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と構えたまま、単刀直入に言った。
 散々聞かぬ存是ぬを通してきた休戦を受け入れてくれるという。
 驚くことだらけで、最早何を信じて良いかわからない。
「それは…正直有り難いお申し出ですが、何故…?」
「五十人、倒すまで息絶えなければ講和に応じると、そう賭けをして、負けた。それだけだ」
 無駄話は不要とばかりに、羊の皮を(なめ)した紙を兵が持ってくる。
「正式な講和条件はそちらの王と改めて考える。とりあえずの休戦を結ぶには、こんな紙切れ一枚でも対外的には十分だ。そうと決まった以上、これ以上の犠牲は無意味だ。そうだろう?」
「はい…」
 状況がわからないながらも、俺は頷いた。この国も、隣の国も、賢帝に恵まれたらしい。
 互いに署名捺印したあと、王は俺の顔をしばらくじっと見ていた。何事かを思案しているようだった。
 それから、ぽつりと言った。
「北山に、行け」
 その言葉に、俺は咄嗟に閃くものがあった。
 目まぐるしく考えが、感情が、駆け巡るー…!
「右の馬を使え!」
 退室の礼もとらずに駆けだす俺の背を、王の声が押した。
「感謝致します!この礼は、いずれ!」
「いらん!…一刻も早く、迎えに行ってやれ」
 王の声が、哀れみを帯びたのを確かに俺は聞き取った。
 着いてきた副官に血判の押された羊皮紙を押しつけ、言われた馬に飛び乗り、俺は駆けた。
 北山、北山と言ったか。
 南から攻めてくると思っていたとは言え、北山にも一応見張りを置いておいた。ただ、その連絡を受け取るのは、五日に一度だけとしていた。今日は四日目。くそ!敵国の王はなんと言っていた?
 五十人倒すまで息絶えなければ和平に応じると賭けをした、そう言っていなかったか?誰と!一体誰とそんな賭けをしたというのだ!
 そして、王が負けたー…。と言うことは、五十人倒したと言うことだ、この国を守ろうとした誰かは。ひとりで…いや、王はそうは言って居ない。複数人かもしれない。でもきっと、あの隙の無い王はそんな甘い賭けはしない!
 誰が、どうやって、倒せるというのだ、たったひとりで、鍛えられた五十もの兵を!
 視界が徐々に曇っていく。流石、雪国を知り尽くした国の王が乗れと言うだけあって、馬は雪原を滑るように駆けて行った。視界はあっという間に潤み、熱い雫が頬を伝った。
 俺は、何を泣いているんだ…。
 今になって、全てわかったような気になるのは何故だ。その考えが纏まるより先に、俺は泣いている。嗚咽を漏らさないよう、歯を食いしばり、唇を噛みしめ、ただ馬の背に鞭を当てている。
 そうだ、俺は知っているんだ。忘れられる訳がない。この国で俺以外にもう一人だけ、たったひとりでも五十人を倒せるだろう人間を…。
 北山の砦に辿り着いた時には、とうに夜も過ぎ、朝にかかろうかという頃に
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