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あの純白なロサのように
あの純白なロサのように
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わたしとそなたはまだ出会ったばかりの王と騎士であるが、わたしはそなたを信頼しているし、そなたもわたしに忠誠を誓ってくれていると思っている。信頼なくしてわたしたちの関係は成り立たない。違うか?」
「いいえ。おっしゃるとおりです」
 王はひとつ頷き、俺の目を見ながら言った。
「言葉とは難しいものだ。わたしは、そなたをわたしの想像だけで疑いたくはない。何故、そのようなことを望むのか、申してみよ。嘘偽りなく」
 俺は、このとき本当の意味で、王への見方が変わった。
 この王は、素晴らしい王だ。王という名が持つ意味を、権力の残酷さを、よくわかっておられる。
 自らの何気ない言葉ひとつで、ひとの命を簡単に握りつぶしてしまえることをよくよく理解して、臣下を大切に思い、民の気持ちに心を添わせ、この国をよき道に導こうとしておられる方だ…。
 この王は間違いなく、俺と本気で話してくださっている。ならば、俺もそれに上辺で答えるべきではない。
「王は、氷の魔女をご存じでしょうか」
 俺は、覚悟を決めて口を開いた。
「ご存じとは…どういう意味でだ?月の騎士は、わたしの騎士だ。知らぬ訳があるまい」
「言い方を変えましょう。王は、この国の運命を、ひとりのか弱い少女一人に負わせることを良しと思われますか」
 王は、俺が言わんとする意味を理解されたようだった。
 ううむ、と唸って椅子に深く座り直された。
「これも運命か…」
 王は小さい声で言った。独り言のようだった。
「太陽の騎士よ。そなたのような者が太陽の騎士となり、この城に来てくれたことを、わたしは神に感謝せねばなるまい」
「それは…」
「そなたの誠意に、わたしも真心でもって答えよう。わたしが今日、そなたを呼んだのは本当はそのためでもあったのだ。まさかそなたに先に言われるとは思っても見なかったが…。くだらぬ昔話を、聞いてほしい。が、その前に決して他言せぬと誓ってくれ」
「他言しません。わたしの名を冠する太陽に誓って」
「ありがとう。友よ」
 王は笑った。この国を統べる者から友と呼ばれたことに、俺は驚きで声も出せなかった。
 王は俺の様子に構わず、ゆっくりと話し始めた。
「わたしがまだ王子と呼ばれていた、昔―…結婚の約束をした少女がいた。その少女は辛うじて王族の端くれという身だったが故に気に留める物など誰もいない存在だった。ゆくゆくは王となるわたしがこっそり遊ぶには丁度良い相手だった。彼女は良く笑い、良く喋った。そう、あの、六年前の流行病までは。覚えているかー…などと聞くまでもないな。そなたの父も倒れたのだ。当時国王だったわたしの父も亡くなり、わたしは十二歳で王になった。そこからは息つく暇も無く、国のことしか考えていなかった。彼女に会う暇など、一切なかった。そなたの父の代わりが見つかったと聞いた
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