参ノ巻
死んでたまるかぁ!
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ぎゃいと騒ぎながら石山寺に戻ってきた。
門をくぐろうとあたしは何気なく胸元を押さえて、青くなった。
ま、勾玉がないっ!やだ、また落としたんだ!
「おい、ピィ!?どこ行くんだ!」
「ごめんっ、先に夕餉の準備しといて!」
あたしは走りながら振り返りもせずに言った。
どこ、どこ…!?もうやだ、なんでこんなに落とすんだろう!
あたしはきょろきょろと周りを見ながら、元来た道を戻った。
幸運なことに、門から五十足ほど離れた小柴垣の横に勾玉はひっそりと転がっていた。
あたしは見つけられたことに心の底からほっとして、それを取ろうと手を伸ばした。その、時だった。
「危ないっ!」
「えっ、きゃああ!」
何が起こったのか、一瞬わからなかった。
鋭い声にそちらを向けば、至近距離に馬の足が見えた。勾玉しか見えていなかったあたしは、道の真ん中で障害物のようにしゃがみこんでいたのだった。咄嗟に両腕で顔と頭を庇う。
けれど、覚悟した衝撃はこなかった。かわりに、苦しそうな馬の嘶きと、どたん!という激しい音が聞こえた。
や、やだ…。あたしを避けようとした通りがかりの誰かを、あたしは落馬させてしまったようだった。とりあえず無事か確かめるために顔をあげようとしたら、その前に向こうが喋った。
「いっ…てて…。尼君様、お怪我はありませんか?」
えっ!
覆った腕の下でさっ、と顔色が変わるのが自分でもわかった。あたしは顔を伏せたまま、動けない。
ま、待って、まって…この声は…。
「尼君様?」
間違いなかった。
たか、あきら…。そっとあたしは呟いた。
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