第128話 劉協と董卓の不和
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劉正礼は華北で異民族を救うために自ら汚名を被るような激甘な男。先帝の目には彼が輝いてみえたんじゃないからしら。彼がいくら何進派といえ、彼に劉協を託せば悲惨な目に遭わせるはずがないと確信したはずよ。そして、先帝は劉正礼に劉協を護りぬけるだけの力を与えた」
賈?は眼鏡の縁を指で押し上げながら真剣な眼差しを張遼に向けた。
「そやけど劉正礼は陳留王を皇帝に推すために動かなかった。違うな。何進派と張穣派のしがらみで動けなかったということか。袁本初の救援の軍が異常に迅速やったのも、都に変が起これば直ぐに動けるようにしていたということなら頷けるな」
「先帝は崩御した後だし、皇帝の後継者争いに参加せず日和見を決め込むことで何進派と張穣派の顔を立てたということでしょうね。救援の軍を迅速に派遣する準備を事前に行なうんだから、何進が命が狙われる可能性が高いことは容易に予想がついたと思うわ。でも、何進を警護するための兵を一人も派遣していない」
「何進が死んでも構わんかったということかいな。酷い奴やな。でも、ウチ等が言うことやないな」
「証拠はないけどね。劉正礼の行動からして張穣に力を貸すとは思えないのよ。先帝の頼みであれば別でしょ」
「でも劉正礼が陳留王を皇帝に推戴する密命を受けていたんならまずいちゃうか。張譲派が勝利した場合、劉正礼が協力しなかったことを糾弾せんとも限らんで」
張遼は黙考した後、賈?に疑問を投げた。
「密命は皇帝に推戴することじゃなかったんでしょ。だから亀みたいに冀州に引っ込んで勢力拡大に専念していた。でも先帝からの密命があるため密かに都を監視していた」
賈?は「ここまで言えばわかるでしょ」と言わんばかりの表情で張遼を見た。
「陳留王の守護か」
「先帝の親心ね」
「劉正礼が陳留王の守護を先帝から頼まれていたなら、陳留王は劉正礼と面識あるはずやな」
「陳留王と劉正礼との間にそれなりの信頼関係があるな。でも憶測の域やろ。賈?ッチ、確信はあるんか?」
「確信はない。でも袁本初に追手を放った件を知った時の陳留王の剣幕は凄かったわ。私達が彼女の身内に危害を加えたような怒りようだったもの」
「それだけかい。陳留王は聡明で潔癖そうやったし、単に嫌っていた宦官を誅殺した袁本初に共感してただけとちゃう」
「その可能性は捨てきれないわ。でも、劉正礼と交渉する窓口がどうしても欲しいのよ」
「藁をも縋る気持ちか。幸先悪そうや」
張遼は賈?の心境を慮って渋い表情をした。賈?は正宗が華北を併呑するまで動かないと確信しているが状況が何時一転するかわからないため不安を払拭できなかった。
また、正宗が華北を併呑するということは董卓陣営にとって脅威でしかない。それが現実のものとなれば正宗に抗える諸候はいるのだろうか。
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