第128話 劉協と董卓の不和
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董卓が洛陽に上洛して一ヶ月が過ぎようとしていた。董卓陣営の面々は皇帝を誘拐した張譲を誅殺した功で朝廷より官位を賜った。董卓は少府に加え司隷校尉、賈?は尚書令、張遼は左中郎将、呂布は虎賁中郎将、陳宮は虎賁中郎にそれぞれ任官された。
「賈尚書令、董少府は今日も朝議を欠席か?」
「王司徒。董少府は司隷校尉の役目で洛外に出ております」
ここは宮城内の集議の間。上座の一際高い場所には皇帝が座り、三公、九卿、その他百官が各々の席に腰をかけている。朝廷ではある問題で紛糾していた。それは宮廷を襲撃し十常侍を誅殺した麗羽に追手を差し向けた件。
「董少府には問いただしたいことがあるのだがな」
「袁本初の件につきましては、この私が董少府の成り代わり回答させていただきます」
「賈尚書令! 董少府は陛下を愚弄しているのか?」
王司徒と呼ばれた壮年の女性が険しい表情で賈?に詰問した。彼女は王允。清流派の重鎮で張譲とは因縁浅からぬ関係だった。黄巾の乱を引き起こした黒幕の一人が張譲であることを知った彼女は張譲を糾弾した。だが、逆に霊帝の逆鱗に触れ、牢獄に入れられ処刑される寸前まで追い込まれた。彼女の宦官派への恨みは他の清流派の士大夫より強い。彼女は表向きは宮廷を襲撃した麗羽を何らかの処罰が必要と主張するが、心の底では宦官を排除した麗羽を賞賛していた。逆に董卓のことは都合よく張譲を誅殺した手並みから漁父の利を狙って出世した卑しい人間と蔑んでいた。
「王司徒、董少府はそのような恐れ多い考えお持ちであろうはずがございません。奸臣張譲を誅殺したことが董少府の潔白を証明しております」
賈?は淡々と王允に答えた。王允は賈?の返答に苦虫を噛み潰した表情をするが直ぐに平静を取り戻した。
「王允。もうよいだろう」
劉弁が人の良さそうな表情で言った。
「しかし、陛下」
王允が劉協に食い下がる。
「王允、賈?より袁本初は冀州へ落ち延びたと報告を受けているではないか。朕は袁本初の忠臣の心十分理解している。だが、宮廷を襲撃した罪は重い。朕は袁本初の官位を全て解官することで処罰とする」
劉弁の言葉に王允は沈黙したが瞳は賈?に向けられていた。その瞳は賈?に対する怒りで満ちていることが傍目から見ても分かった。彼女が劉弁の決定に意見をしなかった理由は麗羽の処罰として無難なものと思ったからだろう。
「これにて朝議は終わりとする」
劉弁は椅子を立つと賈?と王允、百官は皆、その場に平伏して劉弁が去るのを待った。
「賈尚書令、待たれよ」
王允は侍中の荀爽を伴い集議の間を出て行こうとする賈?を呼び止めた。賈?は背後から自分を呼ぶ声の主が誰だか直ぐわかったようで面倒臭そうな表情をした。しかし、振り向き様には
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