第百六十七話 信玄動くその一
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第百六十七話 信玄動く
織田家と本願寺はとりあえずは和睦した。
これにより織田家は長い戦を終え新たに領土とした国や一向宗を抑えた国々の再度の地固めに入った、だが。
ここでだ、甲斐においてだった。
信玄は確かな笑みを浮かべていた、そのうえで二十四将に言うのだった。
「ではじゃな」
「はい、北条殿とは再び手を結び」
信繁が実兄であり主でもある信玄に述べていた。
「北条殿は東に兵を進められました」
「あちらにとってもよいことじゃな」
「はい、関東を攻めるにおいて」
北条から見て西の武田が攻めてこないことは有り難いことだ、それで北条の方も武田と再び手を結んだのだ。一時期宙ぶらりんとなっていたが。
「ですから」
「それでじゃな」
「北条家はこれで」
よくなったというのだ。
「東は」
「では北は」
今度はだった、信玄は高坂に問うた。
「上杉謙信は」
「能登を攻め」
「そしてその能登をじゃな」
「攻め落とすのは時間の問題です」
「その能登を攻め落とした後は」
「既に我等は公方様の仲裁を受けて和睦しております」
武田と上杉もだというのだ。
「既に」
「うむ、あれは渡りに舟じゃった」
「はい、まさに」
最早幕府には何の力もない、しかし大義名分はまだある、それで信玄は義昭の空手形に乗ったのである。
「それは」
「そうじゃった、しかも上杉謙信は幕府には逆らわぬ」
「幕府を絶対と見ているが故に」
それでだ、彼は幕府の和睦の仲裁には逆らえないというのだ。
「それで」
「そうじゃ、後は我等が受けるだけだった」
「それで、でしたな」
「北の憂いもなくなった」
「しかも上杉には織田家征伐の勅も来ておりますし」
やはりこれも義昭からのものだ、義昭は密かに上杉にこうしたものも出しているのだ。
しかもだ、それに加えてであった。
「当家にも来ておりますな」
「うむ、織田家を討てとな」
「だからこそですな」
「ここは受ける」
義昭のそれをだというのだ。
「皆に来てもらったのはその為じゃ」
「では、ですな」
「いよいよですな」
「国も治まった」
信玄は戦は好きではない、戦はあくまで領地を手に入れる為のものだ。信玄が好きなのはその領地をよく治めることなのだ。田畑を耕し堤や橋を起き町を栄えさせ道を整えるのだ。そして民の笑顔を見ることなのだ。
その政も整った、それでだというのだ。
「今からな」
「上洛ですな」
「そしてそれと共に」
「織田と雌雄を決するぞ」
まさにだ、そうするというのだ。
「ではよいな」
「はっ、それでは」
「今より」
「出陣の用意じゃ」
信玄は高らかに告げた、己の家臣達に。
「駿河より東海を上がってい
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