暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−−鼠と鴉と撫子と
34,赤鼻のトナカイ
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と金を払えば簡単に買えるメッセージ録音クリスタル。<還魂の聖晶石>とは天と地との価格差だ。
カチ、とクリスタルのボタンを押し込み、音声を再生する。
だけど、今のキリトに必要なのは、天と地との差をもって、この言葉だと断言できる。


「――メリークリスマス、キリト」
サチがゆっくりと話しだす。心細さと優しさと強さをきっちり三等分にしたような、そんな声。まるで、子供を諭すように、ゆっくりとゆっくりとキリトの心から憑き物を落としていく。


「クライン、泣いてんのか?」
「バカ野郎、ごべはゆきだ。ゆぎぃ」
「そうか――」

真っ赤な嘘を敢えて正さず、俺はそのまま天を見上げた。綺麗な月夜から真っ白な雪が落ちてくる。頬に当たった雪は、心地よい冷たさをを残して溶けていった。

不意に二の腕が暖かくなる。見るとアルゴがイタズラでも思いついた顔でコチラを見ている。
「雪が、良く降るナ?」
「ああ。本当に今日は雪が多い」

会話はソレっきり。だけど、ソレで充分だ。
滲む世界の中、〈赤鼻のトナカイ〉が月夜を優しく包み込んでいた。


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