暁 〜小説投稿サイト〜
SAO−−鼠と鴉と撫子と
34,赤鼻のトナカイ
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ろで思いとどまった。別の設定を少し弄り、お目当てのアイテムをオブジェクト化する。
「ああ、間違いない−−<還魂の聖晶石>。確かに、蘇生アイテムだ」
 金色の装飾で象られた青色の水晶をキリトの方へ差し出した。中でキラキラと輝いているのが魂の様に、見えなくもない。
「ほれ、キリト。やるよ」
「あ、ぁぁ」
結晶を差し出すと、キリトがためらいがちに手を伸ばしてきた。ようやく、手が結晶に触れようかというところで、俺がスッと手を引いた。
「――渡す前に聞いとくか。誰を生きかえらせるんだ?」
一瞬、キリトの顔がポカンとした。そしてすぐに苦痛に耐えるように顔を歪めていく。
「誰を生き返らせるんだよ。ダッカーか?テツオか?ササマルか?」
「く、クロちゃん。ソレは――」
 アルゴの言葉をクラインが腕で遮ってくれた。顔は真剣な表情で俺を睨んでいる。任せる、と、シクジッたらタダじゃおかねえ、ってとこか。
 任せろよ、目で合図をしてキリトの方に向き直る。キリトはワナワナと唇を震わせているが、言葉は未だに出て来ない。
「選べよ、キリト。 誰が生きているのがベストなのか?誰がいれば満足なのか?誰がいれば――サチやケイタに許してもらえるのか」
 言葉にした瞬間に、胸の底がギュッと縛られた。ごめん、みんな。だけど、今だけは許してくれ。手を緩めたら、ここを逃したら、キリトはもう二度と立ち直れない気がする。

「お、俺は――」
キリはとうとう膝をつき、うわ言のように三人の名前を繰り返した。涙が頬を伝った時、ようやくその呟きが意味を持った。
「無理だ、選べないよ。誰が生き返っても――サチは、悲しむ」

「わかってんじゃねえか」
俺は、キリトの頭をポンと叩いた。敢えて強めに。きっちりと脳みそまで届くように。

ムードメーカーのダッカー。
大人しいけど常に冷静なササマル。
真面目なテツオ。
――誰か、一人でもいなきゃ、あのときの月夜の黒猫団は成立しない

「もう、俺たちはあのときには戻れない。俺も、サチも、ケイタも。キリト、お前もだ」
悪かった。そう言いながら、俺はアイテムウィンドウを可視化する。アイテム説明欄には、「死亡後、10秒以内」という絶望的な数値が記入されていた。
あまりにも短い利用時間。それは、SAOでプレイヤーのHPが0になってから、ナーヴギアが脳を焼ききる為の準備時間でしかない。

なるほど確かに、事実は俺の想像以上に悪趣味だ。死に物狂いの結果がコレでは。生き返らせたい人がいるプレイヤーほど、絶望が重くのしかかる仕組み。
キリトに必要なのは、こんなモノじゃない。

「皆はもう戻らない。だけど、まだ残ってるものがお前にだってあるだろう?」
クイックチェンジでアイテムを切り替える。青色から緑色に変わったクリスタルはちょっ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ