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SAO−−鼠と鴉と撫子と
33,戦場のメリークリスマス
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かどうかで思い悩む。
仲間が持っているプレイヤーは救けられるかで思い悩む。
そして、持っていないプレイヤーはどんな手を使っても――例えPKをしてでも、手に入れようとするだろう。
蘇生アイテム自体が、SAOというゲームの新たな火種になることはまず間違いない。

人を救うために人を殺す結末を生む魔性の秘宝。それはどうしてだか――この世界一血生臭いゲームにはぴったりの逸品だ。

「正直言って、俺はあって欲しくないと思ってる。ガセネタだったで終われば、それが一番いいんだ」

目を閉じながら、告げた言葉はそのままグサリと自分に突き刺さった。
月夜の黒猫団が本当に元通りになるなら、俺だってそうしたい。

多くのプレイヤーが、そのたった一筋の希望を手に入れようとしている。
キリトも、俺も、そう強く願う気持ちに悪意はない。だからこそ、質が悪い。
見上げた月は心なしか、いつもよりも冷たく光っているように見えた。


ワープポイントを超えた瞬間、やはり、そのポイントが最後だったということを俺たちは理解した。
やっと追いついた黒の剣士は片手で剣に手をかけ、油断なく俺たち10人を睨みつけている。

その様子は明らかにダチに対する態度じゃない。
顔には、焦燥と絶望しか見て取れず、うつろな瞳には何も映っていなかった。

「――尾けてたのか?」
「まあな、追跡スキルのスペシャリストがいるんでな」

クラインはバンダナで逆立てた髪を申し訳なさそうにガリガリと掻いた。
ここに至る詳しい説明は不要なはずだ。

「キリト、オレらと組めよ。報酬はドロップした奴のもので恨みっこなし。それでいいだろ!!」
「それじゃあ……意味が無いんだよ」

キリトが剣に触れている右腕に力がこもる。
抜くのか、一瞬そう思ったがキリトの右手は細かく震えているだけでまだその覚悟はできていないみたいだ。

「やめろ、そんな事してもアイツらは喜ばねえよ」
「……!!」

キリトの腕の震えが高まった。
やっぱり、戦う理由は罪滅ぼしか。
だったら、勘違いも甚だしい。

その時、別のワープポイントがぐらりと揺れた。

「クライン、お前らも尾けられてたな……」
「ああ、そうみてえだ」

出てきたのは、俺達の三倍はいるであろう大所帯だ。
高級な装備に身を包み、行軍してくるメンバーの数人には見覚えがあった。

オレが前線にいた頃からの最古参ギルド――確か今は《青竜連合》と名乗っているはずだ。
レベル自体は前線から外れていたオレよりは少し上と言ったところか。恐らくはクラインやキリトよりかは下のプレイヤーばかりだろう。
だけど、この戦力差。後に控えるボス戦を考えたらキツイなんて話じゃない。


「チクショウ――キリト、アルゴ、クロウ
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