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第二十六話 王と…
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「双方、武器を収めよ。王の御前である。」

轟音と共に降ってきた男は、高らかにそう叫んだ。

その大音声はさっきまで響いていた雷鳴に匹敵した。
眼光は物理的な圧迫感を感じさせるほどの圧力をもっている。
本人の言うとおり王の威厳を持つ男だ。
普通の人間ならその威厳に無意識に従ってしまうかもしれない。

だが、その男に対峙するセイバーとアーチャー。
曲がりなりにも英霊である彼等が、この程度でどうこうなる器の持ち主ではない。

だが、この戦場にも英霊でない者達もいる。

マスターであるキリトとアスナは突然の男の襲来に体を硬直させ、大音声で叫ぶその声に、思わず汗を流さずにはいられなかった。

だが、キリトは瞬時に冷静さを取り戻して、その男を見つめた。
自分はこの男にあった事がある。

一度、フィールドで自分を叱咤したあのサーヴァントだ。

「わが名は征服王イスカンダル、此度の聖杯戦争ではライダーのクラスで現界している」
「……なぁ――――!」

誰かの驚く声が響く。
その場にいる全員が絶句した。
聖杯戦争によって重要な意味を持つ真名を自分から明かす英霊が居るとは思っていなかったのだ。

どう反応して良いものか判らない。

「うぬらとは聖杯を求めて相争う巡り合わせだが……矛を交えるより先に、まずは問うておくことがある。うぬら各々が聖杯に何を願うのかは知らぬ。だが今一度考えてみよ。その願望、天地を喰らう大望に比してなお、まだ重いものであるのかどうか」

ライダーの物言いに、不穏なものを感じたセイバーの眼差しが鋭くなる。

「貴様、何が言いたい?」
「うむ、何が言いたいのかというとだな……」

威厳はそのままに、飄々とした口調でライダーはとんでもないことを言う。

「ひとつわが軍門に降り、聖杯を譲る気はないか?さすれば余は貴様らを朋友として遇し、世界を制する快悦を共に分かち合う所存である。」
「……」

言葉を失うとはのことだ。
あまりの突拍子のなさにセイバーは怒りを通り越して呆れ果て、アーチャーは鋭い眼差しをそのままにライダーを睨みつけている。

征服王イスカンダル。

またの名をアレキサンダー。
その名は広く世界に知られている。
世界征服に最も近づいた英雄であるその男が、いきなり現れて真名を名乗り、挙句の果てに一合もやりあわぬうちから自分に仕えろと勧誘してくる。

この人を食った提案とむちゃくちゃ以外の評価が思い浮かばない行動はどうだ?
破天荒すぎて英断か愚挙かの判断も出来ない。

「急に現われて何を言い出すかと思えば……」

アーチャーが一歩前に出て言葉を噤む。
その瞳は心なしか細まっているような気がする。

「その提案には承諾しかねる」


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