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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第四十八話 黒子は動き、舞台は廻る
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 であるならば、第五旅団を投入した以上、払暁に近衛総軍の前方に展開する万を超した<帝国>猟兵部隊を相手取るには前衛部隊が徹底的に不足しているのは当然だろう。
 ――それでもなお、奴はあの旅団を引きずり回して〈帝国〉軍の寝首をかこうとしているわけか。俺は、絶対にそのような真似はできない――そうした確信がじくり、と豊久の臓腑の底で羨望と自制の入り混じった感情をのたくらせる。
「そうだろうな、直衛自身も信じ切れてはいないだろうが、それでもここでこうするしか勝てないと踏んだのだろう、あぁ畜生、それでも奴は――あぁ畜生、これも奴の考えの内か?」
 舌打ちをすると豊久は瞼を揉み始めた。
 ――今度は奴の舞台で踊る羽目になるか。いいだろう、いいだろうさ。皇都で踊らせた分は踊ってやるさ。血を流しながら笑ってこの部隊を引きずり回しながら

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