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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第四十八話 黒子は動き、舞台は廻る
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人とも持ち場に戻ってくれ。導術、行動再開は小半刻後だと各隊に通達しろ」

 指揮官同士が会話を交わす横で支隊幕僚達はこれからの方針について議論を交わしている。
「気になるのが龍兵共ですね。彼らは北領に龍巣を設置しているのだから、導術がない<帝国>軍ならば状況判断は彼らの龍兵隊長にほぼ一任されることになります。
予定通り第二軍の展開する方面で得た〈帝国〉側の優位を利用して攻勢に出るか。
それとも――最高司令部が設置されており、兵站集積所でもある海岸堡の防衛を優先するか」
 苦い顔を浮かべる情報幕僚に、戦務幕僚の石井少佐が対処案を提示した。
「このまま、近衛の突破集団と分離して行軍すれば被害の分散ができるのではないでしょうか?
龍兵の装備は炸裂弾を一匹につき一つのみ。本命を外せないのならば、三点に攻撃対象を分離させるのは有効かと」
 首席幕僚も薄い唇をなぞり、頷く。
「それはいいな、上空で部隊を三つに分けられるほど、詳細な命令が出せるものだろうか?むこうは導術を使えないのだ、飛ぶ前に伝達を行うならともかく、一度飛んだら、部隊に対する指示はある程度大雑把なものにしかならないだろう。そうなると近衛の――」とそこで大辺は口を閉じ、敬礼をする。幕僚達もそれに従い、敬礼を奉げる。
その先にはふてぶてしい笑みを浮かべた支隊長が居た。
「成程、諸君もなかなか夢と希望に満ち溢れた未来を計画してくれているようだな?
やはり龍爆か?」

「はい、支隊長殿。ここの資料の通り、敵龍兵は、ほぼ確実に我々の戦闘中に飛来するものと思われます」
 戦務幕僚である石井少佐の予測を受けて支隊長が言葉を引き継ぐ。
「そしてそれと同時に予備師団を投入した大反攻か――そうなるとこっちも長引いたらマズイわけだ。こうなってくると本営狙いも夢物語じゃなくなったわけだな」

「第二軍がどれ程もたせることが出来るか、第三軍の突破が間に合うかどうかが問題ですね。最悪、近衛と協同して本営を制圧するのも手ではあるでしょう。向こうが勘付いて居れば飛んで火に居る夏の虫ですが――」と首席な幕僚は珍しく言葉を濁す
「――どうした大辺。幕僚なら最後まで意見を言え」
「近衛はおそらく本営を最優先目標とするでしょう。近衛の主力銃兵を投入した以上、彼らの目的はそれに他なりません――信じられません。あまりにも投機的すぎる」大辺が自身の思考を疑うかのように首を振る。
 先遣支隊はあくまで剣虎兵部隊を集成して編成された部隊であるが、近衛の浸透突破集団は唯一の常備銃兵旅団をも投入している。近衛総軍は比較的早期に後備部隊の動員をかけており、この龍港湾にも数個大隊が投入されているが、龍港湾にて展開している近衛総軍の銃兵部隊の主力部隊が現在、五○一大隊と共に浸透している近衛衆兵第五旅団である事はかわりない
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