第三部龍州戦役
第四十八話 黒子は動き、舞台は廻る
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僚、記録しておいてくれ」
馬堂中佐は訓練幕僚が帳面に書き付けている事に満足そうに頷くと 瞼を掌で覆い、思考の海に沈んだ。
――第一目標は達成した、問題はこの後だな。師団司令部は高級将校が行方不明になった事で警戒しているだろう。
――哨戒網の強化だけではなく、何らかの対策を執ると想定して動くべきだろう。
ひょっとしたら既に司令部から旅団本部への騎馬伝令が発っている可能性もある。
――俺達は第三軍の主攻正面部隊を指揮する師団司令部を潰せばいい。払暁まではあまり時間がないが逆に言えば払暁後の第三軍の再攻勢まで司令部をマヒ状態に陥らせていればそれで最低限の目標は達成している。
――問題は向こうの対応だな。第三軍の主力に対応するために更に防衛戦の縮小――いや、流石にこれ以上は本営に近づき過ぎる。第一段階を成功させても自分達が綱渡りしている事はなんら変わらないのだ。
「――導術!支隊全部隊に伝達!支隊各隊はこれより小半刻以内に掃討を終了させよ。終了次第、旅団本部から持ち出せる限りのものを持ち出して適当なところまで懐に潜り込むぞ。
そうしたらいったん休止だ」
「よろしいのですか?時間がありませんが」
「<帝国>軍にとっての本番が開幕するまであと二刻以上ある。ならば後学の為に我らが麗しの戦姫と不愉快な仲間たちの書いた台本に目を通すだけの価値はあるだろうさ」
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「・・・・・・泣けてきたな」
手慣れた様子で旅団本部の地図と書類に目を通し、豊久はそういって肩を竦めて見せた。
戦闘後は清潔に、などとは流石に太平の世を過ごしてきた<皇国>軍も標語には掲げておらず、血糊を透かして<帝国>語の翻訳やら焦げくさい書類の解読は、極めて困難であった。それでも参謀の帳面や、旅団本部員の一人が血をぶちまけただけで済んだ比較的被害の薄い地図などを第十一・第二大隊の本部から選抜された<帝国>語の堪能な面々を総動員して解読に当たっていたこともあり、支隊長が到着するまでに<帝国>軍の構想を概略程度であるが把握することが出来たのである。
「第五東方辺境領騎兵師団・払暁と同時に反攻開始。これだけでも十分な成果です。軍司令部への連絡も済みました。早急に行軍を再開しましょう」
首席幕僚はやはり淡々とした口調であるが、それでもいつもより早口であった。
「第十一大隊の損耗は軽微です。我々が前衛を務める事に支障はありません」
佐脇少佐は、自身の部隊が旅団司令部の制圧という大功を得た事もあり、馬堂中佐を上官とする事に疑問を抱くことはなくなっていた。
「第二大隊も点呼と負傷者の処置は完了しました。現在は休止と周辺警戒にあたっています」
第二大隊長である縦川少佐の報告を受けて、青年中佐は笑みを浮かべて頷いた。
「宜しい、二
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