第三部龍州戦役
第四十八話 黒子は動き、舞台は廻る
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猛獣の鳴き声と狂気じみた悲鳴を上げて這いずりまわる兵達。そして彼が最期に見た光景は何人の命を刈り取ったのか、天幕から漏れる灯りに照らされた色が見えずとも分かるほどに血と臓物の臭いを撒き散らす騎銃を構えた――
「も、猛獣つk――――」言葉を言い終える事すら許されず――クラント二ウスキィは剣牙虎に文字通り叩き潰され、怜悧であった頭脳も蛮地の外気に晒され機能する事はなくなった。
そして剣虎兵とそれに随行する銃兵達は次々と天幕の中を制圧すべく中に押し入って行く。
かくして、第二旅団本部はあまりにもあっさりと壊滅した。
本部の護りが脆弱であった――とクラントニウスキィを批判するのは酷であろう。かつては三個大隊を単隊で食い散らかした第十一大隊の全力――それも貴重な夜戦訓練を受けた鋭兵のみで構成された第二大隊の支援を受けている――を投入されていたのであるから。
そして佐脇少佐の指揮は北領で第十一大隊が流した血を礎に再構築された剣虎兵の戦闘教義に則ったものであり、その教範通りの指示は佐脇以上に剣虎兵の現実を知っている下級将校達の手によって解釈され、実行された。
敵に勘づかれずに、剣虎兵部隊を戦闘にした突撃陣形を三方に展開できた事は瞠目に値するものであり、佐脇大隊長は導術で突撃を命ずるのと同時に彼も鋭剣を引き抜き、旅団司令部へと突撃を開始し、半刻もせずに旅団本部天幕に佐脇俊兼大隊長が乗り込み、旅団本部の制圧を支隊本部に伝達するまでに至った事は優秀な部下たちの補佐があった事を差し引いても佐脇少佐の高い統率力を示すものであった。なにしろ包囲網を敷かれている事にも気づかずに旅団長は剣牙虎によって命を刈り取られ、第十一大隊は完璧に戦術目標を瞬く間に達成したのだ。佐脇大隊長は彼の指揮した戦闘の結果に完全に満足していた。
そして同時に戦闘へと突入していた旅団本部の護衛を務めていた猟兵大隊はさらに悲惨であった。棚沢少佐の指揮する独立混成第十四聯隊鉄虎大隊はその卓越した練度を誇るが如く小隊単位で巧みに相互支援を行いながら突撃を敢行し、大隊本部は瞬く間に文字通りの全滅に至り、手際よく戦闘部隊も屠られていったのである。鉄虎兵達が野放図に小隊規模まで拡散し跳梁できた理由は彼らを支援してた第一大隊による的確な支援が原因であった。大隊長である囲関少佐は夜戦に於ける銃兵達の活躍には悲観的であり、あくまでも支援役に徹するべく指揮を執っていたのである。
導術による管制の下、戦列を並べた銃兵達による包囲を行い、一人も逃さない事に徹底した動きをとった第一大隊は、井関大隊長の予想を遥かに超えた効果をもたらした。
銃剣先を揃えた横隊に四方から追い立てたられ、荒れ狂う猛獣達の牙に身を晒す事になった猟兵達は恐慌状態に陥ったのである。これは、本来こうした状況下をもコントロールしうる<帝国>陸軍将校
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