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或る皇国将校の回想録
第三部龍州戦役
第四十八話 黒子は動き、舞台は廻る
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皇紀五百六十八年  七月十九日 午前第一刻
南方戦域〈帝国〉軍防衛線より北方十三里 集成第三軍先遣支隊 支隊本部
支隊長 馬堂豊久中佐


 第五〇一大隊の接敵報告を軍司令部から伝えられてから数刻が経った。
 部隊の査閲に出ていた将官らしき男とその供回り達をまとめて仕留めた旨を聞いた支隊長は、「相変わらず妙な引きだな、新城は」と笑ってみせたが第五旅団まで参加していると聞いて僅かに顔を顰めた。龍口湾中央を防衛する近衛総軍が主力の常備銃兵隊を投入しているのだ。決して愉快なものではない。
だが、結局のところ近衛がどうしようと先遣支隊は下された命令通り、密やかに前進するしかない事には変わりなかった。
「却説、現在の先遣支隊は上手く機能しているかな?」
 
「浸透部隊の先鋒を務めている第十一大隊が上手く先導してくれているのだから、大丈夫でしょう。聯隊戦闘導術中隊から二個小隊を大隊本部に預けた事で、索敵を行えている事が大きいかと。佐脇大隊長が導術利用をどう考えているのかは分かりませんが、幕僚陣が上手く使っているようですから心配はいらないかと」

「第一・第二大隊も現在は中隊単位で分散していますが、第十一大隊の各部隊の先導の下で行軍をしています、側面も鉄虎大隊が警戒を行っていますので問題ないかと。
ただ、鉄虎大隊が小隊単位で分散していますので、戦闘時に混乱が起きる可能性はあります」

「だからこそ、大隊本部が支隊本部と合流しているのだよ」
鉄虎大隊長の棚沢少佐が肩を竦めた。そして、支隊本部は鉄虎大隊と共に直轄部隊の鋭兵・工兵中隊と共に分散した支隊の中央を進んでいる。
 こうして、隠密性保持の為に分散が行われていが、そろそろ限界が近い事を本部要員たちも理解していた。
 「日付が変わってから、敵哨戒が増えています。敵中枢に近づいているからだとも考えられますが、それだけだと考えるのは危険でしょう」
 石井戦務幕僚の意見は大半の将校達の意見を代弁していた。
「首席幕僚、どう見る?――流石にそろそろ勘づかれたか?」
 支隊長・馬堂豊久中佐もその意見に頷くと隣を歩む首席幕僚に問いかけた。
「確信はしていないでしょうが想定はされていると考えるべきかと――我々、先遣支隊は夜襲専門の編成です。このまま払暁までに間に合わなかったら砲で叩かれて殲滅されます。次の小休止時に戦闘導術部隊に遠見をさせて、方針を練らなくてはなりません」

「あぁ、もう消耗を気にかけてばかりはいられないな。」
 導術兵は貴重だが、流石消耗を恐れて浸透部隊が全滅するというのもぞっとしない話だ、と豊久は苦い顔で頷く。
「現状では想定されていた時間配分よりは順調に進んでいます。楽観的な予測ですが、近衛の浸透突破集団の行動次第ですが場合によっては師団司令部を迂回し、そのまま海
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