暁 〜小説投稿サイト〜
打球は快音響かせて
高校2年
第53話 木凪ベースボールフェスタ
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登場する。
まずは3番の東。スラッとした長身で、良いバッターの雰囲気に満ち満ちている。

カーン!

東は初球のストレートを三塁側のファウルにした。が、そのファウルもしっかり芯で捉えた速い打球。

(美濃部の球もかなり走ってるのに、初球からタイミング殆ど合ってるとは、気が抜けねぇなぁ)

美濃部は一冬越してストレートの球威がパワーアップし、木凪の暖かさもあって135キロを越してきていた。そのストレートをいとも簡単に捉えるのだから、昨日までの地元公立とはさすがにレベルが段違いである。

カン!

次に投じた膝下のスライダーに対しても肘を畳んだスイングで対応。今度は一塁側のファウルに。右に左に、コースに対応して打ち分けていた。

(今のも甘く入ってたら長打だったんだろうな。いやー怖い怖い)

宮園は次の球を一球外に外した。
そしてウイニングショットに、意外な球を要求する。

(口羽相手に使えたら、この球も信用できるよなぁ)

フォーク。昨秋から投げていた球ではあるが、イマイチ精度は高くなかった。美濃部は一冬かけて、このボールの習得に励んでいた。

(使う為に練習したんだから、思い切って投げてみろよ)

宮園が構える。アウトローの要求通りに美濃部が投げ込む。ボールは低く制球され、流れるように左打者のアウトコースに落ちていった。

カーン!

打者はそのボールに手を出す。快音が響くが、引っ掛け気味。セカンド真正面に強いゴロが飛び、渡辺がその打球を2塁に送る。2塁上の枡田から一塁へボールが送られ、ゲッツーが成立した。

「おっし!」

美濃部が小さくガッツポーズしながらベンチに戻っていく。まずは初回を0点に抑えた。

(強い打球だったなー。初見の変化球でも芯に当ててくるかー。)

宮園はホッと胸を撫で下ろした。強い当たりをされながらもセカンド真正面に飛んだのは、単なる相手のミスショットという訳でもないだろう。そこにしか飛ばないような球を、美濃部が投げていた。一つ、手応えである。フォークは使えそうだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーー

「どんな感じ?」

ゲッツーを喰らってベンチに戻ってくる東に、口羽高校の4番・阪濱が声をかけた。

「まぁまぁ、良いピッチャーなんじゃない?変化球、スライダーがよく切れてるかな。最後に打ったのはフォーク。変化量は大きく無かったね。」
「ふーん、そう」

阪濱は頷くと、東の胸をどついた。

「何引っ張りにかかってんだよ。次に繋ぐとか考えなかったのか」
「はいはい、すみませんすみません」

東はしれっとした表情で受け流し、グラブを受け取って守備に走っていった。

「もう。きちんと俺に繋げば、点とってやるのに」

阪濱
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