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渦巻く滄海 紅き空 【上】
三十四 病棟密会
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蛙たるとも一度受けた借りは必ず返すのが礼儀じゃ」
「…しっかし、ガマブン太の奴も一応契約を結んだじゃないですか」

フカサクに脅されるような形で、渋々ナルが口寄せをした事実を認めたガマブン太。しかし自来也は解っていた。
自身でさえ手に負えないガマブン太の事だ。おとなしく引き下がったのは頭の前だけで、実際ナルに従うつもりは更々無いだろう。性格からしておとなしく従う輩ではないため、そこは仕方ない。問題はやけにナルの事を気に入ったらしい己の師のほうだ。
ガマブン太を口寄せした直後、ナルは気絶した。チャクラの使い過ぎである。フカサクの命令で木ノ葉病院にナルを連れて行ったガマブン太は、その後すぐ妙木山へ帰った。しかしながらフカサクは未だ消えずにいるのだ。

「…あの子に仙術でも教える気ですか?いくらなんでも早過ぎる…っ」
「中忍本試験とやらがあるのは残り二週間くらいしかないけん。時間が足りんからそれは無しじゃ」
時間があったら教えたのか…と内心ツッコミを入れつつ、自来也は虚を突かれた思いで師を見返した。もしやと問い掛ける。
「…ナルを孫のように考えとるんではないですかのォ」
「煩いわい!せいぜい娘じゃ!!」
ワシらには子どもがおらんのじゃぞ!と半ば逆切れのように言い返され、自来也はがっくりと肩を落とした。
どうやら必死になって自身を庇おうとしたナルの行動に、師は甚く心を打たれたらしい。気を失ったナルに向ける眼差しがどう見ても子どもを通り越してまるで孫娘を見守る祖父のような穏やかなものだったからだ。

(ミナトよ。ナルは頭と姐さんの…、蛙夫婦の養子になってしまうかもしれんぞ)
そう心中で告げて自来也は思わず天を仰いだ。折しもナルの瞳とそっくりな、突き抜けるほどの真っ青な空だった。












白一色で占められた空間。装飾の少ない、どこか殺風景な病室で、男は重い瞼を押し上げた。
首をめぐらす。薄く開かれた窓に掛かる白いカーテン。陽射しを遮るそれは、寄せては返す波のようにふわりと大きく揺れている。カーテンの波がゆっくりと引いてゆくにつれ、太陽の光と似通った金が顔を覗かせた。

「そろそろ目覚める頃だと思っていたよ」


先ほどまで誰もいなかったはずの窓辺。薄い白を透かす陰影は、外界の木々だけではなく確かに人影を映している。静かに笑みを象るその影につられるように、男は笑った。
目が覚める前から感じていた予感はやはりあたったようだ。
「お久しぶり、ですね」
五日振りに発した声は予想以上に掠れている。ごほっと咳を吐き出した男を、呆れを孕んだ声音で「この間、会ったばかりだと思うが?」とナルトは答えた。

血色の悪い顔色に、幾重にも刻まれた隈。青白い面立ちで傍らの机から水差しを手にした男は、視
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