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トワノクウ
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第二十六夜 芹摘み、露分け衣 (一)
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通り名なのである。このあまつきには四天という天に最も近い四人がいる。帝天、告天、梵天、暁天。この内『高みの見識』を意味する梵天≠ェ梵を指す」
「他の御三方の通り名にも意味があるのですか」
「うむ。梵によると、暁天は『暁を願う者』、告天は『運命を宣告する天子』、帝天は『この世の支配者』である」

 梵天≠フ意味が意味だけにもう少しひねるかと思いきや、意外と字が体を現している。

「梵は四天の中で唯一帝天と面会≠キる特権を持つ。ただし帝天の坐す空間、すなわち天≠ノ入るには眠って(しん)を切り離さねばならないのだ。それゆえ梵が眠っている間は天≠ノいるということなのである」
「じゃあ、梵天さんは今、鴇先生にお逢いしてるってことですか!?」

 朽葉をはじめ、六年前の事変に関わった人間は、全員が鴇時と会えないはずだ。それを容易く叶えられる者がいた。朽葉が知れば何を思うだろう。

「いや、梵の申すところによれば、梵も白沢には逢えておらぬらしいのである。近くまで行けはするが、白沢のいる場に入る前に拒まれてそれ以上は進めぬらしい」
「鴇先生が来てほしくないって思ってらっしゃる、ってことですか……」

 くうは鴇時が梵天を拒む理由を分かりあぐねた。せめて元気な姿なり声なり見せれば、梵天も安心できるし、梵天から朽葉に話が伝われば、朽葉も喜ぶのに(天座と朽葉の仲がどうかはこの際考えない)。

「うむ。それでも梵は幾度となく面会のため眠りにつく。その間は無防備になるにも関わらず、だ。白沢も応えてくれればよいものを」

 明らかに梵天寄りの台詞だ。くうはつい笑った。

「空五倍子さんは梵天さん想いですね。素敵です」

 空五倍子は相変わらずの表情で一言。

「まあ我の場合、腐っても梵は、親のようなものであるからな」

 ―――――ん?

「親ぁ!?」
「うむ」

 まさか梵天くらい格の高い妖になると卵くらい生めて当然とかいうオチ!?

「何を考えておるのか予想はつくが、違うのである」
「よ、よかったです」

 くうは複雑ながら安心した。

「我のこの身はいわば空の器。その中身はおそらく妖のカスのようなものだったはず。梵はそのような物を寄せ集め、妖鳥の骨に詰め込んだ。そして己の翼とした。それが我だ」

 布団を全て干し終えて、塔の中に戻ってお茶にすることになった。

 茶器は空五倍子が用意してくれた。空五倍子が器用に茶を淹れる様子を見ながら、くうは話題の続きを口にした。

「他の妖も空五倍子さんみたいに梵天さんが作ったですか?」
「いや違う。梵にできることは『失われるであろうものを留めておく』ことだけ。新しく創り出せるとしたら、それは帝天だけだ」

 空五倍子が湯呑みを鉤爪で摘
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