暁 〜小説投稿サイト〜
トワノクウ
トワノクウ
第二十六夜 芹摘み、露分け衣 (一)
[1/3]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 拝啓、私の尊敬する先生

 わたくし篠ノ女空、つい先日はじめて友達とケンカしました。

 ケンカってお父さんとお母さんもたまに夜中にするんですけど、痛くて辛くて悲しくて、私は絶対にやらないと決めていたのに、よりによって一番の親友とやらかしてしまいました。

 でもふしぎ。なんだか前よりずっとすっきりした気持ちで薫ちゃんと付き合える予感がするんです。
 これって、私達がお互いにホントウの気持ちを見せずに過ごしてたってことなんでしょうか? 「友達」なのに超えなかった一線があったんでしょうか?

 先生はケンカしないどころか、大声を出すこともない方ですもんね。
 それでもお父さんとすごーくすごーく深い友達なのは、やっぱり一緒に異世界に行った仲だからですか?

 今の生活は充実してます。朝起きて、借りた着物に着替えて、朝ごはんを作る。塔の掃除をしては妖関係の品を発掘して、梵天さんに由来を聞きに行ったり。夕ごはんを作って食べて、片付け。あとはゆっくりして寝る。こんな感じです。

 寺でお手伝いさんをしていた頃ほどではありませんがちゃんと仕事がありつつ、ゆっくりもできています。退屈に過ぎれば空五倍子さんや露草さんが、花札や歌留多で遊んでくれます。

 ゆるやかに流れる優しい毎日。だからこそ、くうを襲った不安は必然のものでした。







 露草の目覚め。菖蒲との対話。薫との決闘。
 一度にたくさんのことを終えてから、くうの時間はぽっかりと空いた。くうは過ぎる日々をのったりのったり過ごしていた。

(今日もいいお天気ですねー。お布団でも干しましょうか)

 塔の入口の階段に腰かけ、夏に萌える若草の爽やかな香気を楽しんでいたくうは、ふと思いつき、借り物の水色の小袖を翻して塔の中に戻った。こうしてやるべきことを発見できると気持ちが落ち着く。

 ある一室に露草と空五倍子が揃っていた。ちょうどいいと、くうは二人の部屋に入る許可を貰った。

「別にいいぜ。梵の奴は昼寝中だから無理だぞ。起こすんなら相当の覚悟してけよ」
「謹んで辞退申し上げます」

 残念ながら干せる布団は三組となった。




「梵天さんてよくお休みになるほうなんですか?」

 くうは、手伝いを申し出てくれた空五倍子に聞いてみた。くうでは背が届かない物干し竿に、空五倍子が布団を干す。そしてくうが棒で布団を叩く。

「一度寝つくと、てこでも起きん。一日で起きることもあれば一週間あのままのこともある。まちまちであるな」
「一週間!? ひょっとしてご病気とか?」
「いいや。あれは梵天≠フ地位にいるゆえの副作用だと梵は言った」

 くうは布団を叩くのをやめて傾聴の姿勢をとった。

「梵天≠ニいうのは元は位を表す
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ