心を開いて、妹さん その三 最終回
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切れだった。
「そうだが――それはことのついでで、行きがけの駄賃だ。お前が山田先生といつまでたっても仲直りできそうにないと思ったから、私がこうして仲を取り持ってやっているのではないか。お前が会いたがっていた山田先生と会わせやったんだ感謝しろよ」
織斑先生の笑い声が聞こえる。
もう反論する気力も体力もない俺は、はいとだけ答えた。
織斑先生はもう帰っていいぞと言うと俺の前から去っていく。
今回はこれで許してくれるらしい。
立ち上がる体力もない俺は、グラウンドに大の字に転がると、ぼんやりとしか見えない星空を見上げた。
すると俺の目の前に影が差す。
見れば、そこには手のひらがあった。
俺に手を差し伸べたのは山田先生であるが、俺からは照明のせいでどんな表情をしているのかよくはみえない。
俺は手を伸ばし、山田先生の手を握る。
俺が立ち上がるとき、疲れのせいか足取りがおぼつかず、生まれたての仔鹿のように足がブルブルと振るえていた。
そんな俺に寄り添った山田先生は支えてくれる。
寮まで送りますよという山田先生の言葉に俺は甘えることにした。
山田先生の乗っていた自転車の荷台に腰を下ろすと、出発しますよという言葉が聞こえた。
荷台に横乗り状態の俺は走っている途中で自転車から落ちないようにと山田先生の腰のあたりに両腕を回ししがみつく。
自転車に女子と二人乗りをする――なんてシチュエーションに、俺は憧れてはいたが、何か俺と山田先生の位置関係が違う気がする。
今の俺が位置を入れ替えたとしても自転車のペダルはこげそうにないがな。
ちなみに山田先生が乗ってきた自転車はアシストつきらしいので、男子の俺が荷台に乗っていても問題はないそうだ。
山田先生に寮まで送ってもらった俺は、部屋に戻るとすぐに服を脱ぎ捨てシャワーを浴びる。
そのあと俺は、服を着ると疲れもあってかベットに潜り込むととっとと寝てしまった。
眠るまでの片時、山田先生との関係も修復できたし、これですべて丸く収まった――と思っていた。
俺は一つ重要なことをすっかり忘れていることを――とある日の朝、簪さんに言われた言葉で思い知ることになる。
「ベインズくんってアニメ見るんだよね? 今日の授業が終わったら一緒にどう、かな」
この簪さんの言葉を聞いて俺は固まっていた。
一夏と簪さんはまだ関係が修復してなかったのか。
俺は思考が止まっている脳ミソを無理矢理働かし考え始める。
とはいっても、簪さんと一緒にアニメ見るかどうかではない。
一夏と簪さんをどうしようかと考えているのだ。
考えた挙句、俺が出した答えは、俺が一夏と模擬戦をやって情けなく負けるところを簪さんに
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