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トワノクウ
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第二十五夜 風花散る (三)
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友達を殺した――そんな長渕薫を、薫が一番消してしまいたい。

 それなのに。
 今にも消えたいくらい自分が大嫌いなままなのに。
 助かってよかったと思っていると、黒鳶に伝えたくてならない。

「薫ちゃーんっ」

 呼び終わるが早いか、白い翼を羽ばたかせて、くうが降り立った。
 くうは黒鳶と猫股と、薫を見比べ、状況を把握したようだった。

「黒鳶さん。ありがとうございます! 薫ちゃん助けてくださって」

 髪が翻る勢いで頭を下げるくう。さすがの黒鳶も面食らっている。師のこんな顔を薫は初めて見た。

「あ、あの、薫ちゃんのことは、くうが一方的に好きなだけで。薫ちゃんは天座とも妖とも関係ないですから。だからその、ヒドイことしないであげてください!」

 くうが再び頭を下げた。

「あんた、何でそこまでするの。あたしなんか庇っても、いいこと、何もないのに」
「――やっぱり、すぐには変わらない、よね」

 変われるものか。薫は、長渕薫が大嫌いだ。嫌い過ぎて、情けなさに涙が滲んだ。
 するとくうが薫の前まで来て、薫とまっすぐ目を合わせた。

「だいじょうぶ。私が薫ちゃんのいいとこ、素敵なとこ、全部教えてあげる。薫ちゃんが自分を好きになれるまで。薫ちゃんが抱えてる辛さに負けないでいられるくらいに、薫ちゃんに言ってあげる。――大好きだよ、薫ちゃん」

 薫は涙でグシャグシャの顔をくうの胸に押しつけた。くうは薫を抱きしめて髪を撫でる。

「あんたのっ、そういうとこが……大っ嫌いなんだよ……!」

 辛うじてそれだけ言うと薫は大声で泣き喚いた。





 泣き止んだ薫は、くうの胸から離れると、黒鳶を向いた。

「この子は、あたしの友達です。それを妖との繋がりとお思いになるんでしたら、好きに処分してください」
「薫ちゃん……っ」

 黒鳶は立ち上がった。もう好きにしろ、とも、付き合いきれない、とも取れる表情。

「藤さん。帰りやすよ」
「! はい……きゃっ」

 立ち上がった薫を、黒鳶がひょいと肩に担ぎ上げたのだ。薫は何か言いかけたが、黙ってむくれた。

「生憎と今日は非番なんでね。とりあえずコレだけ回収していきやす」
「さすが商売人ですねー」
「いえいえ。そんじゃ、次に会うのが敵か味方か分かりませんが、それまではどうぞお元気で」

(うわあ。こんなに心のこもってない「お元気で」って初めて聞きました。むしろ「とっととくたばれ」とか思ってますよこの人)

 それでも黒鳶は薫を迎えに来た。弟子のために一時でも人と妖の区分を棚上げした。それは大きな収穫だ。棚上げできる程度に深層心理に妖への容赦がある証明だからだ。

「黒鳶さんもお元気で」

 くうは愛想よく返し、薫に
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