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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十話  手荒い歓迎
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な脅威だろう。フェザーンは独立するが軍事力は如何するのか、その辺りも気になるところだ。フェザーン回廊を警備する小艦隊を持つ事に留めるのか、それとも正規艦隊を保有するのか……。

旗艦ロスタムを降り空港内部に入ると一般客とは別なルートに案内された。入国審査も殆ど無し、まあ事前にこちらの事は伝えてあるからかもしれないがこれって一種の外交官特権なんだろうな。審査を終えてゲートを出るといきなりパシャパシャと写真を撮られた。一般人じゃない、報道関係者だ、大勢集まっている。俺に近付いてきたが直ぐに同行したヴィオラの部下達が俺の周囲を固めて阻んだ。

「遅くなりまして申し訳ありません」
ヨタヨタと近付いてきたのはヘンスロー高等弁務官だった。しきりに顔の汗をハンカチで拭っている。遅いし手際が悪い。本当ならマスコミなんか事前に排除しておくべきだろう。ヴィオラ准将が顔を顰めるのが見えた。仲悪いんだな、この二人。ヘンスローがぐだぐだと挨拶しようとしたが止めさせて歩き出した。

地上車十台で弁務官府に向かう。危険分散のため主だった者は別々に乗った。本当なら俺はヘンスローと一緒に地上車に乗って話をするべきなんだがヘンスローにはあまり期待は出来そうにない。という事で俺が同乗者に選んだのはモンテイユだ。

大らかな性格で気遣いせずに済むのが有り難い。モンテイユだけじゃなく諮問委員会の他の委員も結構良い人間が送られてきている。厄介者を押し付けられるかと思ったがそうでもなさそうだ。たまにはサアヤ以外の人間と一緒というのも悪くない。帰りにはお土産を買っていくか、皆の分が要るな、日持ちのする焼き菓子の類が良いだろう。

「繁栄していますね、貴族連合軍に酷い目にあったと聞いていたのですが……」
「そうですね、繁栄しています。何も無かったようです」
地上車から見えるフェザーンは十分に賑わっていた。数ヶ月前、貴族連合軍の前に怯えていたフェザーンの姿は何処にもない。まあ街を破壊されたわけでは無いからな、何も無かったように見えるのだろう。

もっとも人の心が受けた傷は目には見えない。このフェザーンには苦しんでいる人間達がいるはずだ。妻を、夫を、家族を失った者……。哀れだとは思わない、同情もしない。同盟にも帝国にも長い戦争の間に家族を失った者は大勢いる。その陰でフェザーンの自治領主府は陰謀を企みフェザーン市民は金儲けに勤しんでいたのだ。自業自得とは言わないが憐れみや同情はするべきではない。

高等弁務官府に着くと直ぐにヘンスローが傍に寄ってきた。相変らずヘンスローは頻りに汗を拭っている。見ているだけで暑苦しい。
「お疲れでは有りませんか、ヴァレンシュタイン委員長。少し休まれては如何でしょう?」
「いえ、少しお話したい事が有ります。話が出来る部屋を用意してください」

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