七十三 落花流水
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が大蛇丸の全身を包み、メラメラとその身を焼き尽くした。
その傍らで、綱手の影がむくむくと実体化してゆく。否、それは影から脱け出している人間だった。
大きく息を吸う。途端、ぺらぺらの紙のように薄かった身体が厚みを増してゆく。
しっかと地を踏み締めた彼は首を大きく鳴らした。
「貴方は…っ」
大蛇丸に駆け寄ったカブトが眼を見張る。綱手の影に潜んでいた自来也は【蝦蟇平・影操りの術】を解くや否や、口角を吊り上げた。
「つれないのぉ、大蛇丸…。ワシだけ仲間外れか?」
自来也の攻撃で焼死体と化した大蛇丸を背に、カブトは冷や汗を掻いた。思いもよらぬ展開に内心焦る。
唇を噛み締めるカブトの背後から、忌々しげな声が自来也に応えた。
「貴方を呼んだつもりはなくてよ、自来也…」
黒焦げの死体からズルリと這い出す。蛇の脱皮の如く、古い身体を脱ぎ捨てて何事も無かったかのように復活した大蛇丸は長い黒髪を掻き上げた。
「どういうつもり?綱手」
大蛇丸の訝しげな視線を受け、綱手と自来也が同時に答えた。
「見ての通りよ」
「交渉は決裂したって事だ、大蛇丸」
自来也と綱手。かつての同志から鋭い眼光で見据えられ、大蛇丸は顔を歪ませた。
(…三忍二人相手は流石にキツイわね…)
以前ならともかく、術が扱えぬ現在にこの状況は非常にマズイ。だが動揺を押し隠した大蛇丸は余裕染みた風情で、わざとらしく嘆息した。
「綱手…私は本当に貴女の大切な三人を生き返らせるつもりだったのよ。それに木ノ葉を潰さないと約束までしたのに…」
自来也に唆されたのか、と残念そうに尋ねた大蛇丸の前で、綱手は静かに頭を振った。
「違う。これは私の意志だ」
きっぱりと断言した彼女は、次いで皮肉げに笑った。
「大蛇丸……お前が里に手を出さないってのが嘘だって事くらい解ってる」
綱手の話に、男達は皆口を噤んだ。黙って耳を傾ける彼らの前で、「それに、」と綱手は俯いた。震える唇で「思い出しちまったんだよ」と小声で呟く。
脳裏に蘇るのは弟と恋人が笑顔で語った夢。そして、波風ナルの顔。
火影の名を受け継ぐ事。その想い。一字一句違わずに告げられた夢。
『火影は俺の夢だから』
それを叶える事が綱手の想いであり、夢だった。だから弟と恋人が命を賭けた夢を、想いを、無下にするなど彼女には出来なかった。
「『形あるモノは何れ朽ちる』…お前は言ったな―――でも、」
瞳が潤む。耐え切らずに零れ落ちた涙が地面に滲み込んでゆく。綱手を気遣った自来也がそっと顔を逸らした。
「やっぱりこの想いだけは…朽ちてくれないんだよ…ッ」
血を吐くように心の底から告げ、そっと涙を拭う。沈痛な面持ちで瞑目した綱手の雰囲気が次の瞬間、変わった
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