七十三 落花流水
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
雲一つ無かった。
見事なまでに晴れ渡った空。眩いばかりの太陽は高く昇り、晴天を一層輝かせている。
正に青天白日と呼べる空は、その下で行われる行為とは不似合いなくらい澄んでいた。
白日の下、時折吹く突風に煽られ、木々がハラハラと葉を落とす。風に浚われて舞い上がった数枚が白い城壁の間を駆け抜けてゆく。
観光名所でありながら、もはや見る影もないほど崩壊した短冊城。昼間だというのに人気の無い城跡は不気味な静謐を湛えている。
そんな、ただでさえ気味の悪い場所で、一人ぽつねんと佇む男は異様なまでに目立っていた。
項垂れたその顔は長い黒髪でほとんど窺えない。しかしながら男から発せられる不穏な雰囲気がひっそりとした城跡をより殺風景にさせているのは間違い無かった。
ややあって近づいて来た規則正しい足音に、男がゆるゆると顔を上げる。
明らかになったその顔は、世間において犯罪者として名高い。長き黒髪の間から覗き見えた瞳がねっとりと蛇の如く細められた。
「――――答えは?」
白昼堂々、白日の下に佇む大蛇丸を、綱手は嫌悪感を露に睨んだ。暫しの沈黙が両者の間に訪れる。
やがて視線を地に落とした綱手は淡々と、だが有無を言わさぬ声音で告げた。
「………里には手を出すな」
自身の心中を言い当てられ、大蛇丸は眉を微かに顰めた。腕が治り次第、木ノ葉を襲う手筈だった彼は綱手の条件に内心顔を顰める。
だがそんな事はおくびにも出さず、にこやかに「いいでしょう…」と大蛇丸は了承してみせた。
ちらりと視線を上方へ投げる。屋根の上で待機させているカブトが頷くのを眼の端で確認してから、大蛇丸は綱手に向かってゆっくりと歩き始めた。
カツ、という二人分の足音が寂然とした城跡に響き渡る。互いの影が重なり合うほどの至近距離で対峙した両者の表情は真逆だった。
腕の激痛で額に汗を掻きつつも嗤う大蛇丸と、まるで無表情な綱手。
「―――答えは?」
再度返事を催促する大蛇丸の目前で、綱手は静かに顔を伏せた。一方の大蛇丸は彼女が此処にいる事自体が答えだと確信していた。
一週間前の取り引きに応じるつもりが無ければ、綱手はこの場に姿を現さないだろう。
「綱手」
それでも猶煮え切らぬ態度を見て取って、鋭く詰る。苛立ちを滲ませた大蛇丸の声音に、綱手はようやっと顔を上げた。
「…答えは…――――」
刹那、大蛇丸の足首を誰かが掴んだ。
「これだッ!!」
聞き慣れた声。だしぬけに足下で轟いた声に、大蛇丸がぎょっとする。
咄嗟に飛び退くが、それより先に発動する術。
「【火遁・炎弾】!」
「…ッ、大蛇丸様ァ!!」
急いで飛び出したカブトの叫びが炎に掻き消される。炎の弾丸
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ