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トワノクウ
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第九夜 潤みの朱(一)
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で役割分担するなんて。でもまとめ役の姫巫女ってのはすごいらしいわよ。強くて美人で無敵なんだって」

 男が支援組と話して「でも」につながるのは文脈がおかしくないか?

「潤君は神社で働いてるのね」
「これも男のくせに姫様の秘書官としてね。あたしみたいな下っ端が仲良くできる相手じゃないってのに、しつこくつきまとってうざいったらなかったわ」
「じゅ、潤君らしいや……」

 くうは気を取り直して本題を切り出す。

「薫ちゃん。その坂守神社にはどうやって行くんですか?」
「けっこー山奥だから……って行くつもり!?」
「うん」

 ――潤に会わなければならない。同じ世界観を共有する者同士で情報の統合を図りたい。薫は彼岸のことを覚えていないが、潤となら有意義な意見交換ができるだろう。

 ――潤に会いたい。会って、同じ境遇の仲間がいることに安心して、友達同士で励まし合いたい。知る人どころか知る物すらない世界で、寄る辺になる存在が切実にほしい。

「ったく、こっちだって暇じゃないのに」
「あれ? 薫ちゃん、案内してくれるの?」
「しなくていいならしないけど。迷いたいなら止めない。それに普通に行ったって一ヶ月は面会待ちよ」
「嘘です、お願いします、一緒に来てください」
「今から?」
「できれば」
「よし、来い」
「あ、一度お寺戻っていい? 履物だけ替えたい」

 二人の少女は慌ただしい寮にかけらも関与せずその場を後にした。
 この忙しさがすぐくうの進路と交差するなどとは、夢にも思わず。






 森に分け入り小道を進み、遠足気分でとっとこ歩く……
 のも、最初の二時間だけだった。

「到着すらできないんですけどー!?」
「知らないわよあたしだって!!」

 適当な石塔にもたれてぶうたれたくうに、薫が地図を振り回しながら反論した。さすが楽研メインボーカル、いい発声だ。
 しかし二時間だ。ブーツでなければ足を痛めてすぐリタイアしていただろう時間をかけて、建物の姿すら見えない。

(おかしい。いくら山奥で明治時代でもアクセスが困難な場所に妖退治の中枢を置くなんて変です。それに、太陽を見上げることって彼岸じゃそうありませんでしたけど、照りつける位置が首の後ろからずっと動かないのは分かります)

 結論。この事態は異常だ。

 くうはその辺から適当に木の枝を一本折った。

「薫ちゃん、今何時か分かる? あるいは時計持ってる?」
「懐中時計なら」

 くうは薫から懐中時計を借りて文字盤を見る。短針は2と3の間だ。それを太陽の位置に合わせて木の枝で地面にそっくり書き写す。

「何やってんの?」
「時計の文字盤と太陽の位置から方位を出します」
「……あんた何気にすごい奴?」
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