第127話 宴 後編
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ざいますが、よろしければ真名をお受け取りください」
桂花は正宗に対して拱手し恭しく顔を伏せ言った。
「桂花、ならば私の真名も受け取ってくれるか?」
「光栄でございます」
荀文若は顔を伏せたまま弾んだ声で答えた。
「私の真名は『正宗』だ。受け取ってくれ」
「はは」
「桂花、そう肩を張るな」
「はい」
桂花は顔を上げ正宗に向き直った。
「麗羽が宮廷を襲撃する前に文を出すように進言してくれたそうだな。お前のお陰で援軍の出立を迅速に行なうことができた。礼を言う」
正宗は麗羽に頭を深々と下げた。
「いえ。正宗様、頭をお上げください。私は臣下として当然の勤めをしたまでです」
桂花は正宗の態度に驚き恐縮していた。
「麗羽はのんびりしてそうに見えるが、ああ見えて激情家でな。こうと決めたたら突っ走るところがある。桂花、これからも麗羽のことよろしく頼む」
「正宗様、畏まりました」
「荀文若殿、ご挨拶が遅れました。私は司馬仲達、真名は『揚羽』にございます。以後、お見知り置きを」
「真名をお預けくださいますので?」
「ええ。私は荀文若殿を高く買っております。それに正宗様が真名を預けておられているのです。私が真名を預けない理由はありません」
「揚羽様、有り難く真名を預からせていただきます。私の真名は『桂花』でございます。それと『殿』はお止めください」
「潁川荀家の才人を呼び捨てにするは気が引けます」
揚羽は何時になく桂花を褒めそやした。彼女は人を褒めてご機嫌取りを行なう性格でない。正宗も彼女のいつもと違う様子を不思議に思っている様子だった。
「私は麗羽様の臣下でございます。正宗様の妻であられる揚羽様に『殿』呼ばわりされるのは心苦しく思います。それに揚羽様のご出身である河内司馬家も代々高官を輩出した名家ではございませんか」
「困りましたね。正宗様、桂花殿を正宗様の直臣に取り立ててはいかがでしょう?」
揚羽は困った表情で正宗を窺い意見を求めた。正宗は揚羽の振った言葉に一瞬疲れた表情をするが直ぐに何事も無かった様に揚羽と桂花を順に見た。桂花は揚羽の提案に驚いている様子だった。
「揚羽、桂花が困っているだろ。桂花、このことは忘れてくれ」
「いいえ! 光栄でございます。ただ、私は麗羽様の臣下でございます。これからも麗羽様をお支えしたいと考えております。揚羽様のご厚情は感謝いたします」
桂花は丁寧に正宗と揚羽に頭を垂れ辞退した。
「残念です。桂花殿をあまり困らせてもいけませんね。今後は桂花と呼ばせていただきます」
揚羽は言葉と裏腹に残念な素振りをせず桂花に言った。桂花は揚羽の言葉を聞き安心し正宗の顔を窺った後、おもむろに口を開いた。
「正宗様、
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