トワノクウ
第二十五夜 風花散る (二)
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薫が昏い感情を深めるほどに身に憑いた妖も強くなる。
(妖憑きって、朽葉さんみたく家系じゃないのは、自分自身の弱さや傷をバケモノに変えて飼ってる人のことなのかも)
精神を妖に移植されただけのくうには分からない感覚だけれど、一つ分かった。薫の凍鉄のように、妖は人の見たくない部分を可視化したモノだ。
自分の醜さ汚さ浅ましさなんて見たくないから、妖は普通の人には視えないように出来ている。
自分の醜さ汚さ浅ましさなんて晒したくないから、妖を退治する。
人間の業が巡り人間に返る世界。それが、あまつきか。
ならば――くうはザッと地に足を付け、薫を見据えて大鎌を下ろした。
「何のつもりよ」
やはり薫に意図は通じた。薫も凍鉄の両腕を下ろした。
「私は薫ちゃんが思ってるような子じゃないよ」
今までは、誰に何を言っても傷つける気がして言葉を噤んできた。だが、今は違う。
たくさんのことを知って、それをいまだに処理しきれないままの篠ノ女空。
でも、他でもない友達のことなら、いくらだって言える。この世の誰より、篠ノ女空が何かを言える場面だ。
「私だって迷うし怖いこともあるし嫌なことだって考えるよ。宿題やり忘れて朝早起きしてやったこともあるし、予習復習まともにしたことないし、やらなきゃって思ってても怠けてばっか。捨てられた動物の前は素通りする。募金もしない。電車で席譲ったことも一度もない。学校で新しいことしたいと思っても、成功したこと一度もないんだよ? 全部粗だらけだから却下されて。先生に手伝えって言われたって指名されるまで黙ってた。ずるい子なんだよ、私も」
「そんなわけないでしょ!」
薫は駄々っ子のように反論する。
「あんたは優等生で、いい子で、天使で、成績はチートでゲームやりまくっててプロ級で! 一個もいいとこも特徴もないあたしなんかとは比べ物になんない!」
「なるよ」
くうは柔らかく微笑む。
「薫ちゃんは美人だし、楽研で一番歌が上手いよ。それにいつだって私と潤君とのこと、真剣に考えてくれたじゃない」
「そんなこと……だって、あんたが、あんたは……!」
「薫ちゃん。私も、ずるくてひどい、中身がドロドロのサナギみたいな、ただの高一の女の子なのよ? 薫ちゃんが羨ましかったのは私のほう。いつだって自分に妥協せず、大事な人にでもきちんと怒ることができる薫ちゃん。いつだって羨ましくて悲しくて……悔しかった」
「嘘よっ!!」
薫は否定しないと己が壊れるとばかりに首を振る。
「覚えてる? 楽研に勧誘されたときのこと。菜月ちゃんは『ボーカルを探してる』って言ったわ。あれね、最初、菜月ちゃんは私を誘いに来たんだと思ったの」
小学校には通わず自宅学習で、同世
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