トワノクウ
第七夜 藤袴
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い。ぼーっとしてました」
見ればもう陰陽寮の建物の入口にさしかかっている。いけない。気を引き締めなければ。
そう表情筋を締めた矢先、正門の前にくうが会いたかった相手が立っていたので、くうの顔は盛大に崩れることとなる。
「やっぱりまた今日も来たのね、あんた」
さも不本意といわんばかりに腕組みをし、塀にもたれて待つ薫がいたのだから。
「あれ、今日は待っててくれたの?」
わーい。ほてほてと、くうは薫に駆け寄った。
「んなわけあるか。あんたが連日来るから」
薫は、むっつりとこちらを凝視している門番に目をやる。
「門番の人に取り次ぎ面倒がられて外に追い出されたの」
「うりゃりゃっ。そりはごめん」
「噛んでる」
「はぅ」
やれやれ、と薫は塀から離れ、くうを見据える。元の世界で最後に会ったのは十日ほど前だろうか。薫はずいぶんと大人びた目をするようになった。
「では、くう」
後ろでくうと薫の会話を聞いていた朽葉に、くうは慌ててふり返る。
「はひっ」
「私は中に挨拶してくる。迎えにくるまで好きにしていろ」
「はい。いつもすみません」
朽葉は門番に取り次ぎさえせず、すたすたと平屋造りの寮に入っていった。こちらはこの3日間で見慣れた光景だ。
朽葉は陰陽寮には属していないが、寮内をうろつく分には咎められない。沙門が佐々木の友人だから、弟子の朽葉も優遇されるのかも、とくうは勝手に見当をつけていた。
「いくら緋褪様のお気に入りでも、ほんとは部外者連れ込むだけでも大目玉なんだからね。あんた自重しろ」
言った薫は心底呆れている。
「ひざめさまって?」
「佐々木様の参謀役。二番目に偉い人。朽葉さんは緋褪様が気にかけてらっしゃる人だから出入り自由だけど、その朽葉さんの連れとなると、ちょっとね」
朽葉が寮を訪なうたびに誰かに会っている様子なのは、その人か。
いつもの帰途、くうは薫との会話を反芻するばかりで、寮に上がった朽葉が何をしているかを聞かなかった。
(主人公のパトロンにお偉いさんのコネがあるってのも無駄に多い設定だけど)
陰陽寮筆頭の佐々木と沙門が友人同士であることといい、あの師弟の交友関係には謎が多い。
「そりは重ね重ねご迷惑をば」
「だから噛んでる」
「でも、くうが来なかったら、薫ちゃん、会ってくれないじゃない」
「あたしも忙しいの。よけいな時間使いたくない」
くうと会う時間はよけいですか、と言おうとしたが言えなかった。
「仕事、多いの?」
「どっちかってーと稽古かしら。あたし半人前だから。一人でやってもあんま意味ないけど」
「黒鳶さんに稽古つけてもらうんじゃないの?」
「師匠もそうあたしにばっ
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