第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
20.July・Night:『The Jabberwock』
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を知っているのだから。
「……なるほど。大したものだ、その程度で、此処まで」
まるで、礼賛するような――――ステイルの調子を。甘んじて、受け入れた。
「――――大した根性だよ、吸血魔術師」
その言葉を塩に、嚆矢は――――意識の手綱を手離す。
ステイルの、口端の……嘲りを、受けながら……。
………………
…………
……
――冷たく沈んだ意識。それは、昔……何処かで感じたもの。
瞼すら開けられない、魔術由来の倦怠感。肌に注ぐ消火用のスプリンクラーの水にも、そればかりは洗い流せはしない。
ただただ、体温のみを奪い去り。この身体を、更に固く強張らせていく。
――あの時とは、真逆。しかし、心を凍てつかせる作用は全く同じ。
あの、炎と揮発油の香りと――――腕の中で、冷えきる……。
「――――ステイル……マグヌス!」
動く事を拒絶する口で、視界から消えたその名を呼べば、沸き上がるように。『無意識の領域』から――――
『――――助けてやろうか?』
掛かった声は、まるで無数の蛆がのたくるような。不快感しか感じない、そんな――――声に擬装した雑音。
『代償は……その生命だがな』
――懲りねェ奴だなァ、テメェもよォ……『妖蛆の秘密《デ・ウェルミス・ミステリィス》』。
第一、それじゃ意味ねェだろ。助かりたいが為に命をドブに棄てる莫迦が居るか。
如何に極限の状況下と言えど、まさか暖を取る為にニトログリセリンに火を灯す者など居るまい。
魔導書との契約は、そう言った類いの物だと。師である男は言っていた。
『莫迦は貴様だ、嚆矢よ。何も今、吸い尽くすとは言っていない……奪い尽くす事は前提だが、我が魔術行使の代償として適宜奪うように妥協してやろう』
それを見抜いてか、今までとは正反対に。まさに、助け船の如く有り難い余裕をもって、まだ見ぬ妖蠅王は語り掛けてくる。
『どうする? あの男が、このままお前を見逃したままにしておくと思うか? 今頃、奴の結界で覆われたこの小部屋に他の魔術師が迫っているやも知れんぞ?』
確かに、その通りだ。殺さず、態々『無力化』した意味は……『捕獲』を除いてはあり得ないだろう。
そんな事は、嚆矢も分かっている。何故に捕獲されるのかは、未だ確証はないが。
『さぁ、我を呼べ。その忌まわしい輝く捩れ双角錐を閉じろ。そうすれば――――今すぐにこの囲いを破り、あの魔術師を我が蛆の腐乱死体に変えて見せようぞ』
そして、奪われた自尊心を擽る。あの魔術師を、打ち倒して見せ
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