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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
20.July・Night:『The Jabberwock』
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》』、『鎮勢(ハガル)』」

 軋むように重厚な、神刻文字(ルーン)を唱えた――――!

「――――――――!??」

――刹那、崩れ落ちるように視界が下がった。文字通り、崩れ落ちた為に。『消沈』の意味を持つ、三大ルーンを刻まれた為に。
 何もかも、面倒になる。呼吸をする事も、思考する事すらも。果ては――――生きる事すらも。

 くず折れ、無様に横倒しになった視界の端。水晶体が像を結ぶ事すらも拒絶したそこで。
 巨漢の魔術師は、紫煙を燻らせる。何時でも始末できると、余裕すら浮かべながら。

「――もう一度問おうか、在野の魔術師……君は、仇為すか?」

 再度の、強制力すら感ぜられた呼び声。焔の魔術師の声に、嚆矢は――――

「――――決まってンだろォがよ、俺ェあ、俺の味方だ。今も、昔も……!」

 『軍神(テュール)』を幾度も刻みつつ恫喝じみて返した、その応え。場所が場所なら、補導済みだ。吐き気や自殺願望と。くしゃりと吸いかけの煙草を握り潰して、嚆矢は――――口を、口だけを開いた。

「憐れだな、魔術師。アンタの願いは、叶わない。永遠に――其処には到れない。誰か、アンタ以外の為の場所には。アンタだけは。いやはや、残念だッたな」

 嘲笑うように蜂蜜色の漆黒を湛えた黄金瞳が歪む。組み敷かれたまま、目の前の道化を嘲笑って。
 嗜虐に歪んだ瞳に、憤怒にまみれた――――

「――――ああ、全くだ。残念でならないよ、『■■■■■■』。僕らにただ、囁くだけの者」

 焔の魔術師は、変わらずに紫煙を燻らせて。何か、酷く耳慣れない言葉を吐いた。
 男の手に握られた煙草の火により、十字が切られる。身が引き裂かれる。何故かなどは二の次で良いと、死にかけた体が叫んでいる。ただ、ただ――

「――――」

 その身を突き動かす、衝動。『死ねない』と。
 浅ましくも、忘れ得ぬ感傷が――――全てを機械化されたこの都市では、センサーが感じ取る。

「――――チッ」

 鳴り響いたのは、火災報知器。こんな場所にまで行き届いていたのかと、魔術師は眉を潜め――――少年の一撃を受けた。避けられず、受けざるを得なかったのだ。

「――――ッ!??」

 肩口に、『何か』を。見る事も、叶わずに。その、『指先』から煙草が――――。

「……運の良い。僕は、僕の魔法名を明かさない相手は殺さない」

 そう告げて、去っていく後ろ姿を見送るしかない。『殺す価値もない』と告げられて、それを僥倖だと感じられるのならば。

「…………」

 最早、言葉はおろか、指一つすらも動かせない。それだけ、ステイル=マグヌスのルーンは強大にして抗えぬものであった。
 当然だ、彼は――――嚆矢の知らない、幾つもの独自ルーン
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